...彼女の部屋は無一物であり、とてもシンプルだ...
...落ち葉の無一物の枯れ木が、寒々しい雰囲気を醸し出している...
...料理の基本は無一物から作り上げることだ...
...彼の部屋は本当に無一物で、何も飾っていない...
...あなたが今、手元に持っている一切の物は、全て無一物から作られている...
...ほとんど無一物でカシグランに着いた...
石川欣一 「比島投降記」
...無一物(むいちぶつ)にひとしいあわれな状態になっていた...
海野十三 「金属人間」
...汽車に乘りて、辨當と酒とを買へば、あとは無一物、一杯機嫌に腹も張りて、あちらでもぐう/\、こちらでもぐう/\...
大町桂月 「上州沼田より日光へ」
...多くは無一物で、生きても死んでゐる者たちであつたが、ある冬の朝、近所のお神さんたちは、昨夜の轢死人は懐中に十円もの金を持つてゐたと噂し、そんな大金を持つてゐながら、どうしてまた死ぬ気になつたのであらうと語つてゐたので、それを聞いてゐた子供たちは大急ぎで柵をくぐり抜け、もしや、その不要な金を子供たちに分けてくれはせぬかと、一散に走つて行つたことである...
武田麟太郎 「釜ヶ崎」
...着物は薄く懐中は無一物で...
田中貢太郎 「黄金の枕」
...本来無一物でなくて...
種田山頭火 「行乞記」
...実は其中庵裡無一物...
種田山頭火 「其中日記」
...折から庵中嚢中無一物なので...
種田山頭火 「其中日記」
...・無一物底、雪降りつもる...
種田山頭火 「其中日記」
...――夕方帰庵したけれど、濡れた着物を乾かす火もなく、空いた腹を充たす米もない、そして無一文、無一物だ、――暮羊君を徃訪する、私を待つてゐてくれたが今日は実家へ行きました、と奥さんが残念さうにいはれる、詮方なく街へ出てW店に腰をおろす、酒を借り飯をよばれ、はては泊めて貰つた!四月四日曇、霰が降つた、晴...
種田山頭火 「道中記」
...僕は無一物の放浪児ではあるが一面なかなかの幸運児でもあるのである...
辻潤 「ふもれすく」
...私の恩師末次教授は私の小さな家を祝して「無一物処無尽蔵」の一軸を賜わった...
永井隆 「長崎の鐘」
...この狭い家では手のつけようもないじゃないか? とにかく無一物からこれだけの物資を集めただけでも大したもんだ...
永井隆 「ロザリオの鎖」
...高僧智識が捨身無一物の信念を以て通るか...
中里介山 「大菩薩峠」
...もう家もない無一物の怖(おそ)ろしさに...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...「本来無一物」とも説かれた...
柳宗悦 「民藝四十年」
...「その人も云ってただ、おら世の中に飽きはてた、人間どもの俗悪さにあいそが尽きた、おら名も要らねえし金も要らねえ、出世もしたかあねえ、こうやって名もねえ人間になって、無一物で、誰にも知れねえように巷(ちまた)を放浪して、そうしてどこかでおっ死(ち)ぬが望みだってよ」「それは殊勝なことを聞くものだ」「その人はそう云ってただよ」杢助は無関心に云った...
山本周五郎 「似而非物語」
...殆ど無一物と相成り居るやうの有樣に候...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
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