...この近傍に住する教育家が、文明の今日、怪物などとは片腹痛しとてこれが調査に出かけしに、果たせるかな、お化けにあらず、榎(えのき)の古株の多年地中にうずもれしが、このごろ掘り出だされしために、燐光(りんこう)を放ちしものなることが判明せりとぞ...
井上円了 「おばけの正体」
...と、果たせるかな、間もなくどこかで笑い聲が聞え、だんだんに他の連中までが話に口を出すようになり、――(彼はまた、他人を話のなかに引き入れることにかけても、入神の腕前を持っていた)――やがて三人四人の話しだす聲が一どきにかち合うまでになった...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...果たせるかな、さすがに彼の死は彼らしく、死後あらゆる方策をその帷幕の者と一門にいいのこして、甲山の旗幟が為に急衰(きゅうすい)を呈すようなことはなかった...
吉川英治 「上杉謙信」
...果たせるかな、その時刻になると、霜の降りたせいかほの白く冴えた袋地の一端に、ぼッと、三ツの黒衣(くろご)が立っている...
吉川英治 「江戸三国志」
...果たせるかな、一歩、摂津に入ると、険(けわ)しいものが往来の者にも感じられる...
吉川英治 「黒田如水」
...――果たせるかな...
吉川英治 「三国志」
...果たせるかな、青鎖門(せいさもん)まで来ると、「兵馬は禁門に入ることならん...
吉川英治 「三国志」
...果たせるかな、やがて陣鼓堂々、斜谷に拠っている敵方の一軍が平野へ戦列を布いたかと思うと、ただ一騎、その陣列を離れて、「玄徳はいるか...
吉川英治 「三国志」
...敵の中核が崩れれば、夷陵の如きはひとりでに囲みが解けてしまうのである」聞くと諸将はみな、どっとあざ笑って、「果たせるかな、この人、無策」と侮蔑(ぶべつ)のささやきを交わしながら退散した...
吉川英治 「三国志」
...――と、果たせるかな、四路の魏軍は、曹丕(そうひ)の目算どおり有利には進展していない...
吉川英治 「三国志」
...――六波羅ノ庁では、かねがね宮中に隠密として入れてある者をして、入念にさぐらせてみると、果たせるかな、世のつねの加持祈祷でないことがほぼ判明したとある...
吉川英治 「私本太平記」
...それだけに、彦右衛門は難しいと思って行ったが、果たせるかな、夜来、根気よく説いてみた彼の老熟の弁も、玄蕃允の意をひるがえさすことはできなかった...
吉川英治 「新書太閤記」
...果たせるかな、その日は来た...
吉川英治 「新書太閤記」
...果たせるかな、その底意は、孟州を離れて三日目の街道で、はや兆(きざ)しが見えた...
吉川英治 「新・水滸伝」
...果たせるかな、途中、彼方の闇から韋駄天(いだてん)の如く走って来た者がある...
吉川英治 「新・水滸伝」
...果たせるかな、その夜半から大下痢を起こし、翌一日も止まないので、高野から有馬へ来、真夜中、有馬の湯の脱衣場の大鏡に自分のゲッソリした蒼白な面を映して「これが死ぬ前の顔か」とひとり眺めたほどな記憶がある...
吉川英治 「随筆 新平家」
...果たせるかな、為憲はすぐそれに引っ懸って来た...
吉川英治 「平の将門」
...果たせるかな、前髪は、くわっと血を顔へのぼせたらしい...
吉川英治 「宮本武蔵」
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