...」女は籐椅子(とういす)へ編物を捨てると...
芥川龍之介 「母」
...「こんな児があっても」と、かの女は抱き児が泣き出したのをわざとほうり出すように僕の前に置き、「可愛くなけりゃア、捨てるなり、どうなりおしなさい!」「………」これまで自分の子を抱いたことのない僕だが、あまりおぎゃアおぎゃア泣いてるので手に取りあげては見たが、間が悪くッて、あやしたりすかしたりする気になれなかった...
岩野泡鳴 「耽溺」
...燃える樣な空氣が流れる大變な人出だこの混亂の中で自分は孤獨をうち捨てるこの混亂の中で人は熱情を露骨にする女も男も急がしくその用に追はれて歩いて居る自分もこの混亂の美に加る...
千家元麿 「自分は見た」
...みれんがましい慾の深い考えかたは捨てる事だ...
太宰治 「故郷」
...論理を捨てるかである...
寺田寅彦 「相対性原理側面観」
...遺骨をどこかに打ち捨てるのと同じじゃありませんか...
豊島与志雄 「絶縁体」
...大役を一つ買われぬかのう」「大役? どういう?」「操を捨てる――」益満は...
直木三十五 「南国太平記」
...自分を切り捨てることであって...
中井正一 「美学入門」
...驚いて逃げる時にピオウと細い聲で鳴き捨てるのである...
長塚節 「鉛筆日抄」
...平生(ふだん)隊中の者に謂(い)つて居たさうです……僕は阪本氏の為めなら何時でも一命を捨てるつてネ……果して龍馬が斬られて同志が新撰組へ復讎に行つた時...
楢崎龍、川田雪山 「千里の駒後日譚拾遺」
...捨てるか殺されるかする最後の運命を待つて居たのでした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...紫檀(したん)の繼弓を捨てる位なら...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...おどろき呆(あき)れる役人の前に綿帽子をかなぐり捨てると激しい興奮に血の気を失いましたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...空財布を庭へ捨てるやうなことはあるまいと思ふが」「それで御座います親分さん...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...この句の「捨てる」は...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...自分の人生を捨てるなんて……」メアリの声は哀願調だ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「くちなしの花」
...つめたい板敷(ここに来るものはすべての希望を後に見捨てる!)あの恐ろしい牢舎の裡からよくも俺だけは生きて出て来た!あれ...
松本淳三 「再生の日の海を眺めて」
...といって何でも西洋風に限ると西洋風にばかり心酔して日本風の長処までを捨てるのも軽卒(けいそつ)に過ぐるけれども事物を公平に観察してその長短善悪を判別するのが我々文学者の責任でないか...
村井弦斎 「食道楽」
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