...然も嬉しい事には、談話に續けて、續膝栗毛善光寺道中に、落合峠のくらやみに、例の彌次郎兵衞、北八が、つれの獵夫の舌を縮めた天狗の話を、何だ鼻高、さあ出て見ろ、其の鼻を引いで小鳥の餌を磨つてやらう、といふを待たず、獵夫の落した火繩忽ち大木の梢に飛上り、たつた今まで吸殼ほどの火だつたのが、またゝくうちに松明の大さとなつて、枝も木の葉もざわ/\と鳴つて燃上つたので、頭も足も獵師もろとも一縮み、生命ばかりはお助け、と心底から涙……が可笑しい、面屋と喜多利屋と、這個二人の呑氣ものが、一代のうちに唯一度であらうと思ふ……涙を流しつゝ鼻高樣に恐入つた、といふのが、いまの南方氏の隨筆に引いてある...
泉鏡花 「遺稿」
...しかも嬉しい事には、談話に続けて、続膝栗毛善光寺道中に、落合峠のくらやみに、例の弥次郎兵衛、北八が、つれの猟夫の舌を縮めた天狗の話を、何だ鼻高、さあ出て見ろ、その鼻を引(ひきむし)いで小鳥の餌を磨(す)ってやろう、というを待たず、猟夫の落した火縄忽(たちま)ち大木の梢に飛上(とびあが)り、たった今まで吸殻ほどの火だったのが、またたくうちに松明(たいまつ)の大(おおき)さとなって、枝も木の葉もざわざわと鳴って燃上ったので、頭も足も猟師もろとも一縮み、生命ばかりはお助け、と心底から涙……が可笑(おか)しい、面屋(とちめんや)と喜多利屋(きたりや)と、這個(しゃこ)二人の呑気ものが、一代のうちに唯一度であろうと思う……涙を流しつつ鼻高様に恐入(おそれい)った、というのが、いまの南方氏の随筆に引いてある...
泉鏡花 「遺稿」
...そのなかにドリー老助教授は、まるで自分のせがれが大演説するのを皆に見せびらかしでもするときのように、鼻高々と、席から立ったり、すわったり、たいへんなはしゃぎようであった...
海野十三 「海底大陸」
...親の富五郎も鼻高々で楽しんでおりましたが...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...霜やけにて少し頬の赤くなりし円顔(まるがお)鼻高からず...
永井荷風 「桑中喜語」
...鼻高々と一座を見廻すと...
中里介山 「大菩薩峠」
...大白猿(だいはくえん)や鼻高(はなたか)盛んの頃には...
中里介山 「大菩薩峠」
...鼻高きが故に貴(たっと)からず...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...『あなたの鼻高い...
萩原朔太郎 「小泉八雲の家庭生活」
...鼻高面(はなたかめん)のお天狗さま...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...ひようきんさうに鼻高のシラノのやうな見得を切つて...
牧野信一 「ダニューヴの花嫁」
...天狗なり! 眼はランランとして鼻高く...
三好十郎 「斬られの仙太」
...天狗なり! 眼はランランとして鼻高く...
三好十郎 「天狗外伝 斬られの仙太」
...中古には緋(ひ)の衣(ころも)に羽団扇(はうちわ)などを持った鼻高様(はなたかさま)は想像することができなかったのである...
柳田国男 「山の人生」
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山之口貘 「山之口貘詩集」
...もしこの許攸が、黄河で計(はかりごと)を授けなかったら、いくら君でも、今日この入城はできなかっただろう」と、鼻高々、鞭をあげて、いいつけられもしないのに一鼓(こ)六足(そく)の指揮をした...
吉川英治 「三国志」
...「あの者は、わが家の秘蔵家来でおざるよ」成輔は、人々から問われるごとに、鼻高々と、自慢した...
吉川英治 「私本太平記」
...さっそく女房の潘金蓮(はんきんれん)へも鼻高々とひきあわせた...
吉川英治 「新・水滸伝」
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