...しかも嬉しい事には、談話に続けて、続膝栗毛善光寺道中に、落合峠のくらやみに、例の弥次郎兵衛、北八が、つれの猟夫の舌を縮めた天狗の話を、何だ鼻高、さあ出て見ろ、その鼻を引(ひきむし)いで小鳥の餌を磨(す)ってやろう、というを待たず、猟夫の落した火縄忽(たちま)ち大木の梢に飛上(とびあが)り、たった今まで吸殻ほどの火だったのが、またたくうちに松明(たいまつ)の大(おおき)さとなって、枝も木の葉もざわざわと鳴って燃上ったので、頭も足も猟師もろとも一縮み、生命ばかりはお助け、と心底から涙……が可笑(おか)しい、面屋(とちめんや)と喜多利屋(きたりや)と、這個(しゃこ)二人の呑気ものが、一代のうちに唯一度であろうと思う……涙を流しつつ鼻高様に恐入(おそれい)った、というのが、いまの南方氏の随筆に引いてある...
泉鏡花 「遺稿」
...七代目団十郎や五代目瀬川菊之丞や五代目半四郎や鼻高の幸四郎なども...
坪内逍遥 「十歳以前に読んだ本」
...上出來のものは家に持歸つて鼻高々と家人に試食させた...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...霜やけにて少し頬の赤くなりし円顔(まるがお)鼻高からず...
永井荷風 「桑中喜語」
...鼻高々と七兵衛の前へ並べて吹聴(ふいちょう)しているのを七兵衛は...
中里介山 「大菩薩峠」
...大白猿(だいはくえん)や鼻高(はなたか)盛んの頃には...
中里介山 「大菩薩峠」
...わしも若い時分は江戸の三座の楽屋へ入り浸って鼻高でも...
中里介山 「大菩薩峠」
...『あなたの鼻高い...
萩原朔太郎 「小泉八雲の家庭生活」
...鼻高面(はなたかめん)のお天狗さま...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...まゆ秀で鼻高く...
三宅花圃 「藪の鶯」
...河村夫妻、熊野夫妻、鼻高々です...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...天狗なり! 眼はランランとして鼻高く...
三好十郎 「斬られの仙太」
...天狗なり! 眼はランランとして鼻高く...
三好十郎 「天狗外伝 斬られの仙太」
......
山之口貘 「山之口貘詩集」
...京都公卿浪人(くげろうにん)異名(いみょう)日本左衛門事(こと)、無宿(むしゅく)浜島庄兵衛、年二十七歳身長五尺三寸位色あさぐろき方(ほう)、鼻高き方、眉(まゆ)めだちて濃し、右眉の中に黒子(ほくろ)、うしろ鬢(びん)に小さき刀傷一ヵ所、右御たずねの盗賊見当り次第訴人あるべき事、かくまいだてまたは逃走の伝手(つて)をあたえたるものは御法に律して重罪たるべきもの也(なり)甲府町方奉行所「なアるほど……」馬春堂は番屋のそばを抜き足さし足に離れて来て、「いやな辻占(つじうら)だなあ」と首を振りうごかしました...
吉川英治 「江戸三国志」
...鼻高々に存ぜられます」「ムム気に入った...
吉川英治 「私本太平記」
...「あの者は、わが家の秘蔵家来でおざるよ」成輔は、人々から問われるごとに、鼻高々と、自慢した...
吉川英治 「私本太平記」
...さっそく女房の潘金蓮(はんきんれん)へも鼻高々とひきあわせた...
吉川英治 「新・水滸伝」
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