...そして一列に並んだ黒ずんだ肖像畫が悲し氣に壁の上からわたしをぢつと見詰めてゐた...
アーヴィング 高垣松雄訳 「クリスマス・イーヴ」
...黒ずんだ自然の中に...
有島武郎 「生まれいずる悩み」
...それは不思議な黒ずんだ色を持った液体であった...
海野十三 「科学者と夜店商人」
...牛の寝た姿の岬は、夕もやに霞んで、黒ずんだ海が、鼠色の空と溶け合い、空には一つ二つ星の光さえ見えた...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...眼付に黒ずんだ険しい光を帯びていた...
豊島与志雄 「女と帽子」
...黒ずんだ、磨きのかかった柱、茶室造りに似た天井――総て侘しく、床しい、古い香の高い部屋であった...
直木三十五 「南国太平記」
...骨のなかに黒ずんだのがあるのを焼き場もりの男は「脂などがあるとどうしてもこうなります」といってつまみだしてみせる...
中勘助 「妹の死」
...黒ずんだ上に鈍い反射を見せてゐる水の面を...
永井荷風 「上野」
...(何時見てもそれは黒ずんだ緑色に塗られてゐたから同一の一台だと思ふ)時々「鍔甚」の前にとまつた...
中原中也 「金沢の思ひ出」
...天井と壁の所々には黒ずんだ血痕が幾つか縞を作つてゐた...
南部修太郎 「死の接吻」
...三原山外輪山の瓦色の黒ずんだ沙漠に出ると...
林芙美子 「大島行」
...卓や椅子は黒ずんだ木で拵へて...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 森林太郎訳 「十三時」
...陰気な黒ずんだ赤の掻練(かいねり)の糊気(のりけ)の強い一かさねの上に...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...袴(はかま)も檜皮(ひはだ)色の尼の袴を作りなれたせいか黒ずんだ赤のを着けさせられていて...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...やや苅りごろに近く黒ずんだ陸稗の畑からも抽(ぬ)け出ていた...
柳田国男 「雪国の春」
...黒ずんだ牡丹(ぼたん)色の雲が裂けて...
山本周五郎 「山彦乙女」
...黒ずんだ幹の行儀よく並んだ橡樹(マロニエ)の蔭を朝踏む気持は身が緊(しま)る様だ...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
...その黒ずんだ灰白色の人骨はどこか紫ばんだ斑点(はんてん)をおびていた...
吉川英治 「新・水滸伝」
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