...鯱鉾立(しやちほこだ)ちをして後悔しても取り返しのつかないことになるぞ...
有島武郎 「骨」
...鯱(しやち)と鯨(くぢら)の中(なか)へ...
泉鏡太郎 「大阪まで」
...鯱(しゃち)、鮫(さめ)でもあるまい...
中里介山 「大菩薩峠」
...金の鯱を眺めていただけではわからない」「もとより...
中里介山 「大菩薩峠」
...何でもようござんすから、早くその名古屋女のお尻の太いところをひとつ、たっぷりと見せてやっていただきたいもんでございます」「まあ、待っていろ、女はあとでイヤというほど見せてやるから、もう少し念入りに、あの金の鯱(しゃちほこ)を見て置け、百」「金の鯱なんざあ、さっきから、さんざっぱら眺めているんでございます、いやによく光るなあ、と思って眺めているんでございます、つぶしにしてもたいしたもんだろう、と考えながらながめているんでございますが、いくらになったところで、こちとらの懐ろにへえるんじゃねえとも考えているんでございます、いくら金であろうと、銀であろうと、眺めるだけじゃ、げんなりするだけで、身にも、皮にも、なりっこはありませんからなあ」「は、は、は、弱音を吹いたな、がんりき、実はお前をここまで引張って来たのは、我々が英雄豪傑の講釈をして聞かせるためではないのだ、お前に、あの金の鯱を拝ませてやりたいばっかりに連れて来たのだ」「そりゃ、有難いようなもんでございますが、もう金の鯱も、このくらい拝ませられりゃあ満腹なんでござんすから、そのモカの方をひとつ、見せてやっていただきてえと、こう申し上げるんでございます」「まだまだ、貴様、そのくらいでは、あの金の鯱が睨(にら)み足りない」「このうえ睨んだ日には目が眩(くら)んじまいますぜ、あれあの通り、朝日がキラキラとキラつきはじめました、綺麗(きれい)には綺麗だけれど、あんなのは眼のためにはよくありません、毒です」「なあに、そんなことがあるものか、貴様の眼のためにはいっちよくきく薬だろう、さあ、もう一番、うんと眼を据(す)えて、あの金の鯱を拝め」「もうたくさんでございますってことよ、眼を据えて見たって、すがめて見たって、あれだけのものじゃございませんか」「ちぇッ、日頃の口ほどにない、たあいのない奴だ、いったい、がんりきともあるべき者が、尾張名古屋の金の鯱を見るのに、そんな眼つきで見るという法はあるまい」「だって、旦那、こうして見るよりほかには、見ようは無(ね)えじゃありませんか」「もっと眼をあいて見ろ」「眼をあけろったって、これよりあけやしませんよ」「そんなことで見えるものか」「見えますよ……」「なあに、そんなことで見えるものか、さあ、こうして頭を真直ぐに、性根(しょうね)を臍(へそ)の上に置いて、もう一ぺん眼を据えて、金の鯱を拝め」「そんなことをなさらないでも、がんりきは盲目(めくら)じゃございませんぜ、これでも人並すぐれた眼力(がんりき)を持った百でござんすぜ」「そのがんりきを見直せ、あの天守は、下から上まで何層あると思う――」「そりゃ、下の石畳から数えてみりゃ五重ありますよ、その五重目の屋根のてっぺんに、金の鯱が向き合って並んでいやすよ、南が雌で、北が雄だということでござんす、ああ見えても、雄が少し小(ちい)せえんだと聞きました、そんなことよりほかには、くわしいことはあんまり存じませんね」「よしよし、それはその辺でいい...
中里介山 「大菩薩峠」
...再三申し上げる通り、金の鯱は、こうして目で見ていてさえげんなりしてしまっていますから、どうぞおしまい下さってお慈悲にひとつ、そのかたかたのほうで、がんりきのお歯に合うところを一つ呼んでいただきたいもんで……実はお恥かしい話ながら、こう見えてもがんりきは、江戸方面は別と致しまして、京大阪のこってりしたのにいささか食い飽きの形ですが、まだその、名古屋大根の水ッぽいところを、一口も賞翫(しょうがん)したことがねえんでございます、宮重大根(みやしげだいこん)の太った白いところの風味は、また格別だってえ話じゃありませんか...
中里介山 「大菩薩峠」
...金鯱城下に駕を枉げしめ...
中里介山 「大菩薩峠」
...よく尾張の国は日本一を出したがる国だ、頼朝、信長、秀吉は事が古い、瀬戸物が日本一で、大根も日本一、踊りも日本一、金の鯱も日本一、美人も日本一、味噌も日本一だといっているが怪しいもんだ...
中里介山 「大菩薩峠」
...それが鯱に攻められたんですがね...
長塚節 「隣室の客」
...鯱に攻められた日にやどうすることも出来ないんですね...
長塚節 「隣室の客」
...もう此の港の口へ近づいて来たとなつたらそれでも鯱はすうつと沖へ引つ返して行きました...
長塚節 「隣室の客」
...肩が飛んでも身体(からだ)が棒のように鯱張(しゃちこば)っても上がる事は出来ん...
夏目漱石 「趣味の遺伝」
...あのきりょうで鯱鉾立(しゃっちょこだ)ちでしょう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「凧にのって金の鯱(しゃち)をはがす頓狂なやつだっている...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...戴冠式の前日にテラスの胸壁で鯱っちょこ立ちをしようなどと思っていない...
久生十蘭 「だいこん」
...固い爺むさい鯱張つた感じがうすれて...
堀辰雄 「「文藝林泉」讀後」
...一度は鯱(シヤチホコ)のやうな勇ましさで空を蹴つて跳ねあがつたかとおもふと...
牧野信一 「鬼涙村」
...屋根の鯱(しゃち)や廂(ひさし)の瓦などが吹飛んでいるのは砲弾の炸裂(さくれつ)によるものであろう...
吉川英治 「日本名婦伝」
便利!手書き漢字入力検索