...更に痛切に無事を願うの念が強いのである...
伊藤左千夫 「水害雑録」
...しかれども神よ、もし御意(みこころ)ならば我をして再びわが夫(おっと)の家に帰らしめよ、もちろん我は爾を捨ててわが夫に帰る能わざるなり、これ爾に対して罪なるのみならずわが夫に対して不貞なればなり、爾のしろしめすごとくわが夫に天地の正気(せいき)鍾(あつま)るあり、その壮宏たる富嶽のごとく、その香(かんば)しきこと万朶(まんだ)の桜のごとく、その秀(しゅう)その芳(ほう)万国ともに儔(たぐい)し難し、我如何(いか)にしてこの夫を欺くべけんや、彼の正気は時に鬱屈するといえども、明徳再び光を放つ時は、宇宙に存する渾(すべ)ての善なるもの渾ての美なるものは彼の認むる所となるなり、偽善諂媚(てんび)は彼の最も嫌悪する所なり、我は彼の威厳を立てんがために我の良心に従わざるを得ず、ただ願う神よ、もし彼に誤解あれば爾の聖霊の力に依(より)てこれを氷解せよ、もし彼に迷信の存するあれば爾(なんじ)の光を以てこれを排除せよ、しかして余再び彼に帰し、彼再び我に和し、旧時の団欒(だんらん)を回復し、我も彼の一臂(ぴ)となり、彼をして旭日(あさひ)の登るがごとく、勇者の眠(ねむり)より醒めしがごとく、この歴史上厄急(やくきゅう)の時にあたって世界最大国民たるの一助たらしめよ、余は知る誤解のために離別せし夫妻が再び旧(もと)の縁に復するやその情愛の濃(こまや)かなる前日の比にあらざることを、余もまたこの国に入れられ、この国もまたその誤解を認むるに至らば、その時こそ余の国を思うの情は実に昔日(せきじつ)に百倍する時ならん...
内村鑑三 「基督信徒のなぐさめ」
...そう願うか」宿舎は民家で...
梅崎春生 「狂い凧」
...かの山林の払下を願うとか...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...どうかそのおつもりに願う...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...半ばは叔母の方から願う形で...
豊島与志雄 「影」
...――われ爾(なんじ)が冷かにもあらず熱くもあらざることを爾の行為(わざ)に由りて知れり我なんじが冷かなるか或は熱からんことを願うこんな句が彼女の心に留った...
豊島与志雄 「湖水と彼等」
...いざ一太刀の御教導を願う」「心得たり...
中里介山 「大菩薩峠」
...願うのではないが...
長谷川時雨 「一世お鯉」
...その死を願うだけで殺せるとしたら...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...その正式の請取は後日の事として今日は唯(ただ)金子(きんす)丈(だ)けの御収納を願うと云(いっ)て...
福澤諭吉 「福翁自伝」
...願うのは、ただ御仏のお導きのみ...
藤野古白 藤井英男訳 「人柱築島由来」
...死んだのちも忘れないでくれとお前たちに願う資格が私にはある...
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig van Beethoven、ロマン・ロラン Romain Rolland 片山敏彦訳 「ベートーヴェンの生涯」
...直情径行に願うことは何であろう...
宮本百合子 「現代の主題」
...自身でおぼつかなくなっている手を耳から探り出したいと願うふうが見えた...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...あれを今一度見たいと願う...
夢野久作 「能とは何か」
...この主婦の思い願うものは驚くほど質実単純なことにちがいないのだが...
横光利一 「夜の靴」
...「願うてもないこと」と...
吉川英治 「剣の四君子」
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