...足元には、音もなく、後から後からと見る間に降り積んで行く...
伊藤野枝 「乞食の名誉」
...ハッと思うと大きな石が音もなくコロコロと座敷に転がり込んでくるという...
井上円了 「おばけの正体」
...音もなくそこらに散らばる度に...
薄田泣菫 「独楽園」
...余らが枕頭に控えていると居士は数日来同じ姿勢を取ったままで音もなく眠って居た...
高浜虚子 「子規居士と余」
...あとは寂然(じゃくねん)たる夜の闇で、何の物音もなく、ただ馬の鼻息とともに馬子が呼吸(いき)づまるような声で、「馬を出せ、前へ出せ」と喚いているだけだ...
モーリス・ルヴェル Maurice Level 田中早苗訳 「乞食」
...すると今までは人のいる気勢(けはい)もなかった屋根船の障子が音もなく開(あ)いて...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...追いすがる足音もなく...
中里介山 「大菩薩峠」
...朔風が音もなく過ぎて行く...
中谷宇吉郎 「古代東洋への郷愁」
...二つの小さな角燈が音もなく揺(ゆら)めいて見えた...
夏目漱石 「それから」
...……心のなかで何かが音もなく頻(しき)りに崩(くず)れ墜(お)ちるようだった...
原民喜 「死のなかの風景」
...音もなく開いたドアの隙間から黒い人影が広間に辷りこんできた...
久生十蘭 「肌色の月」
...水々しい銀杏返しの頭、裾を引いた市松模様の着物、手にひるがえす銀扇、豊醇に熟(う)れきった身体のこなしが、柔軟に、音もなく、舞台のうえをすべって、さす手、引く手に、いいようもない妖(あや)しい色気がただよう...
火野葦平 「花と龍」
...門は音もなく開かれた...
モーリス・ルブラン Maurice Leblanc 婦人文化研究会訳 「探偵小説アルセーヌ・ルパン」
...そいつらは音もなく飛び降り私の足首に纏わり付いた...
A. ブラックウッド A. Blackwood The Creative CAT 訳 「盗聴者」
...肋骨の間を音もなく吹きぬけて行くような...
横光利一 「旅愁」
...音もなくあいた襖すべりに耳をとめて...
吉川英治 「江戸三国志」
...裲襠(うちかけ)のすそを音もなく曳いて...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...東儀与力は音もなく近づくが早いか...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
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