例文・使い方一覧でみる「青」の意味


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...葉の中に寄る浪のはらはらと爪尖(つまさき)白く...   青葉の中に寄る浪のはらはらと爪尖白くの読み方
泉鏡花 「悪獣篇」

...江が叫んだときには...   青江が叫んだときにはの読み方
海野十三 「怪塔王」

...皆が帰った後で魚は竹に問うた...   皆が帰った後で魚は竹青に問うたの読み方
田中貢太郎 「竹青」

...むかしの友とあるく蔦をははせて存らへてをる□・山ふところで桐の花・草に寝ころんで空がある咲いてかさなつて花草二株□・別れて橋を渡る・葉の心なぐさまないしつかりしろ...   むかしの友とあるく蔦をははせて存らへてをる□・山ふところで桐の花・青草に寝ころんで青空がある咲いてかさなつて花草二株□・別れて橋を渡る・青葉の心なぐさまないしつかりしろの読み方
種田山頭火 「行乞記」

...さらに木健作氏を訪ふ...   さらに青木健作氏を訪ふの読み方
種田山頭火 「旅日記」

...何もかもい...   何もかも青いの読み方
田畑修一郎 「南方」

...かつなんじを覆(おお)い纏(まと)うところのものはすなわちエリシヤ諸島より携え来たれるのと紺との布なり...   かつなんじを覆い纏うところのものはすなわちエリシヤ諸島より携え来たれるの青と紺との布なりの読み方
徳富蘇峰 「将来の日本」

...酒場の中からどんたりどんたり話声が聞えて来る空樽(たる)に腰を掛けて冷酒(ひや)をあふつてゐた目の苦茶苦茶した浅黄服を着た男が微酔(ほろゑひ)機嫌で酒場の中から出て来たオ、お喜乃か、ウム、美い綺縹だなオイ兄え(年配の男に)己(おら)ア一足先き帰(けへ)るよ千鳥足で行つて了つたホ、権が来だ!年配の男は、向ふを見ながらお喜乃に顋(あご)でしやくつた権はひよつこり酒場の前にやつて来たお喜乃は駈け寄つて権の手を握つた権さんお前どうした、工場から暇が出たのかお喜乃は悲しさうに権の顔を眺めてゐる権もお喜乃の顔を眺めてゐるお喜乃の目からはらはらと涙が零(こぼ)れた権さん、工場やめてどうする嘘だ、嘘だお前大坂へ帰へつちやンだらうお喜乃はほろほろ声になつてゐる夕焼の空は一面に赤く燃え立つてゐた権は何んにも云はずに下を向いて立つてゐる権さん、お前、大坂へ帰るならわたしも、一所に連れてつてお呉れな又してもお喜乃の声は顫えてゐるお喜乃は夕方になると赤い花簪(かんざし)をさして、酒場の前に立つてゐたが権はそれつきり遂ひぞ酒場に来なかつた忠義の犬日比谷公園の広ツ場に編みあげの赤い靴を穿き祖母(おばあ)さんに連れられて美晴子(みはるこ)さんが遊んでる浅い弱い春の日は鏡のやうに晴れてゐた中学生が五六人テニスネツトを引つ張つて組に分れて遊んでる軽くボールはぽんぽんと向ふにこつちに飛んでゐた祖母さんは、遠くの方へ退(ひ)つ去つて腰をかがめて見せてゐるテニスコートの向ふから足の太い、毛の長い強さうな犬がさつさと歩(や)つて来た美晴子さんは、活動の『忠義の犬』を思ひ出し丸い目をして見て居つたあの犬も忠義の犬になるか知ら同じやうに耳も垂れてゐるし口も大きいし――美晴子さんは目をはなさずに眺めてゐる中学生のラケツトが何(ど)んな途端(はづみ)かぐんと来て犬の後(うしろ)に落つこちた犬は走つてラケツトを口に銜(くは)へて立つてゐる美晴子さんは小さな声で祖母さんに『忠義の犬』の話をした小さな出来事足の短い狛犬(こまいぬ)はポチに噛ませてやりませう糸のたるんだ風船と空気のぬけた護謨毬(ごむまり)はタマに噛ませてやりませう弾機(ばね)の廻らぬ自働車((ママ))は銑葉(ぶりき)の台へ載せたまま馬車に轣かせてやりませう翼(はね)のゆがんだ木兎(みみづく)は牛に踏ませてやりませうか、馬に踏ませてやりませうか、うしろの沼へ捨てませうか飛べなくなつた飛行機と共に窓から投げませう硝子(がらす)の中の人形も明日(あす)はお暇(いとま)やりませう何(ど)つかの島へ着くやうに島の人形になるやうに桐の小函に帆をかけて――大川の水に流してやりませう蝙蝠蝙蝠(かうもり)よ、蝙蝠よ井戸端に蚊柱が立つてゐる早く来て喰はないか蝙蝠の家は何処だ山か里か何故咄(はな)さぬ蚊柱が立たば迎ひに行くぞすぐに来て喰へよ呼んでも、呼んでも蝙蝠は居ない臍をまげて隠れてゐる臍をまげた蝙蝠に蚊柱は喰はせるな早くバケツで水かけろ螢の親父が飛んでゐる蚊柱が立つても蝙蝠に咄すな呼んでも呼んでも来ない蝙蝠が来たなら跣足(はだし)になつて追つ蒐(か)けろ縁側彼はお針をしてゐる妻君に爪の伸びた手を出して鋏を借せと云つた鋏は妻君の膝のあたりにある若い妻君は彼の手を眺めるやうに見て笑ひながら鋏をとつて渡した彼は日の当つてゐる縁側に胡座(あぐら)をかいてパチリパチリ切り初めた爪は遠くまで飛んで皆んな庭の上に落ちる妻君はそーつと彼の後(うしろ)に来て顔を覘いてゐた彼は爪の奇麗になつた手を出して見せた若い妻君は黙つて立つて笑つてゐるわしの隣人彦兵衛彦兵衛が、家の前の畑に蘿蔔(だいこん)の種を蒔いてゐると郵便配達が来た彦兵衛は汚れた手で葉書を受け取つて眺めてゐる配達は行つて了つた電車の車掌に及第した東京の忰からの葉書だ彦兵衛の顔はにこにこした囲爐裡(いろり)の中に麦鍋が泡(あぶく)立つて煮え零(こぼ)れてるお霜お霜が畠に馬鈴薯(じやがたらいも)を掘つてゐると馬を牽いた男が弄戯(からか)つて通つてゆくお霜が土手に足を出して休んでゐると前(さき)の男が馬を牽いて帰つて来たまた弄戯つて通つてゆくお霜がもう帰らうとすると藪の中に男は首を出してゐた留さん東京で流行(はや)る――サイノロジーと云ふ田舎にはない新言葉西洋の煙草の名でもあるか知らと留さんは思つてゐた留さんが田うなひに出て行つた後(あと)で頬の赤い嬶(かかあ)が長々と昼寝をしてゐるボーリン衝きの若い監督はサイノロジーと云つて笑つて行く留さんは解(げ)せずで解せずで堪らないその晩、夕飯を喰ひながら嬶に咄した嬶は飴菓子を噛りながらこれも解せずで――首を抂(ま)げたお艶お艶(つや)が風呂にはいつてゐると若い男がだましに来た小さな声でだましてゐるお艶がざぶり湯をかけてやると男はうろうろしてゐたが裏からすーつと逃げて行つた馬は厩(うまや)に馬堰棒(ませんぼ)をがらんがらんと鳴らしてゐる天の川は北から西へ流れてゐた六蔵六蔵が家の前に立つて田の稲を眺めながら群雀(すずめ)のことを考へてゐると――群雀の一団(ひとかたまり)が飛んで来て稲の上にかぶさるやうに下りた六蔵は駈けて行つて鳴子(なるこ)の綱を引つ張つた群雀はパツと飛び上つて行つて了つたこんな日が幾日も続いた田に稲がなくなると群雀は来なくなつた六蔵は何んにも考へずに寝そべつて煙草を吹かしてゐる米松米松(よねまつ)が鍬を担いで野良から昼餉(ひる)に帰つて来た裏戸が開けつ放しになつてゐる鶏が竈(へつつい)の上へあがつて鍋の中から麦飯をつつき散らして喰つてゐた隣の金(きん)が家に小間物屋が来てゐる嬶(かかあ)の笑ふ声が聞えた米松は忌々しげに泥手で煙草を吸つてゐる嬶は西瓜(すゐくわ)を喰ひながら帯の間(あはひ)に巾着(きんちやく)の紐をぶら下げて帰つて来た鶏が厩の前へ駈けて来て立つてゐる娘と劉さん娘劉さん赤ん坊が生れたならばどうしませう何処へたのんで育てませう劉ワタシ ワカラナイ アナタ スル ヨロシー娘横浜の叔母さん所(どこ)へ遣りませう新しい一(ひとつみ)の一(ひとつ)も着せて遣りませう娘叔母さんに断られたらどうしませう劉ワタシ クニ トホイ ワカリマセン娘悲しいけれど捨てませう顔の見えない闇の晩ミルクの管(くだ)を哺(くく)ませて――公園のベンチの上に捨てませう娘お月夜の晩であつたらどうしませうお月夜が続いて居たらどうしませう育てませうか捨てましよか劉ワタシ ニホン タツ アナタ タノム娘薄情な、薄情な劉さん思ひ切つて――悲しいけれど捨てませうベンチの上に々と月がさしたら泣くでせうわたしの顔を屹度眺めて泣くでせう劉さん劉さんその時のわたしの心はどんなでせう磯の上親恋しがりの子雀よ親が恋しく海へ来たのか海へはいつて蛤に化(な)つて了つた親雀はお前のことはもう忘れてゐるぞ幾ら待つてゐても元の親には逢はれないのだ帰れ、帰れ海の端で日が暮れたら子雀よほんたうにはぐれ雀になつて了ふぞ親の古巣に妹はどうした、姉は居ないかもう日は山から暮れて来る海鵯(ひよどり)よ子雀は磯にとまつて動かないだまして山へ帰さぬか百姓の足百姓の足は怖いから見たら逃げろと親蛙が咄して聞かせた子蛙は毎日畔(あぜ)の上に匍ひ上つて眺めてゐたが百姓の足は来なかつたある夕方子蛙が沼の端(はた)で遊んでゐると百姓が鍬を担いでやつて来た百姓の大きな足が子蛙の後(うしろ)からずしんずしんと地響を打つて歩いて来る子蛙は堪らなくなつて沼の中に飛び込んで顫え顫え隠れてゐた百姓はずんずん行つて了つた子蛙が眼子菜(ひるも)の茎に捉(つかま)つて泣いてゐると親蛙は田の中から跳ねて来て一所に連れて帰つた怖い百姓の足が毎日田の中に這入つて来た百姓はたうとう子蛙の居所までも跡方なしに耕して了つたそれでも子蛙は生れた田の中が自分の家だと思つて居たら皆な怖い足の百姓のものだと親蛙に聞かされた手若い女は水菓子屋の表に立つてパイナツプルを買つてゐる若い男は店の中にはいつてパイナツプルを買つてゐる男が取り次いでくれたパイナツプルを受けとるとき女の手が顫えた男の手女の手女の手は顫える畑ン中(ある農夫の歌の VARIATION)真昼間でごわせう畑(はたけ)ン中に、田鼠(むぐらもち)が一匹斑犬(ぶち)に掘りぞべられてイヤハヤむんぐらむんぐら居やあした畑の土は、開闢(かいびやく)このかた、黒いもんかどなもんか真(まこと)の所、烏に聞いて見やあすべい畑ン中は、空天上、不思議はごわすめえ喉笛鳴らした、ケーケーケー鶏(かしは)が走つたこりやまた事かと魂消(たまげ)払つて居りやあした蜻蛉(あけづ)が一匹追つかけ廻つた、啄(つつ)くわ啄くわぶつ飛びあがつた、飛んだわ飛んだわ蜻蛉は御運(ごうん)でござりあした地主様の一人娘が娘に二種(ふたいろ)何処(どこ)にごわせうどどの詰りがエヘン孕み女になりやあした畑ン中の豆ン花何(ど)なもんだ朝つぱらから何事ぶたずにべろりと咲いてござりやあす山火事野兎の子と雉(きぢ)の子と住んでる山が山火事だ早く逃げぬか焼け死ぬぞ先刻(さつき)鳴き鳴き雉の子は飛んで逃げた野兎の子はどうした山の上に走り腐つて逃げたのが野兎の子でなかつたかあれは宿なしの山鼬(いたち)だ鼬だと鼻ン先が黒い筈だ黒いとも、黒いとも真黒だ駈けてつて見ろ山一面に火の海だ逃げ道がなくなる野兎の子はどうした山に居るのか居ないのか息を切つて逃げて来た何方(どつち)の方へ逃げてつた雉の子が飛んでつた山の方へ夢中になつて走つたぞ己の家一 その頃己(おれ)が東京から帰つてゆくと鶏小舎(ごや)の側(そば)に無花果(いちぢく)が紫色に熟してゐた己の家の穀倉(こくぐら)には米と麦が向ひ合つて重ねてあつた己は背戸の杉山に懸巣が来て鳴くのがうれしくて堪らなかつた己が馬に乗つて野にゆくと頬白は藪の上に囀つてゐた己は座敷の丸窓を開けて紅い芙蓉の花を眺めながら毎日、本を読んで遊んでゐた丁爺(ていぢー)が餅を搗いて持つて来て呉れた己が飛行機の話をするとほんたうとは思はずに帰つて行つた己は巻莨(シガー)を吹かしながら村の子供等を集めて庭の植込の中を歩き廻つて遊んだ己は日暮方になると裏の田甫(たんぼ)の中に立つてバーンスの詩の純朴に微笑(ほほゑ)んでゐた己は百年も二百年も斯(かう)して生きてゐたいと思つた二 篠藪蝸牛(ででむし)よ黙り腐つた蝸牛よ、渦を巻いてゐる蝸牛よ何が恋しい篠藪にさら、さら、さらと雨が降る夢現(ゆめうつつ)に己は暮らした蝸牛よ己に悲しいコスモスの花と花とに雨が降るもう、己の家は最終(をはり)だ蝸牛よ田も売らう、畑も売らう篠藪にさら、さら、さらと雨が降る三 霜の朝厩(うまや)の前の葱畑に霜が真白に降つてゐた己が顔を洗つてゐると鵯(ひよどり)が来て南天の実を食つてゐる己が売つて了つた馬を博労(ばくらう)が下駄を穿いて牽きに来た馬は博労に牽かれて門を出ながら悲しさうに厩の方を振り向いて見てゐた己は門の外まで駈けて行つて見た冷たい朝日がさしてゐる田甫の中を馬は首を垂れて博労に牽かれて行つた己は茫然として縁側に腰を掛けてゐた鵯が南天の木から囲垣(ゐがき)の椿の木へ飛んで行つて己の方を向いて鳴いてゐた己の家の囲垣は樫の木を売つて了つてからほんたうにみそぼらしくなつて了つた緑の食(は)んだ銅(あかがね)の門の垂木(たるき)から霜解の雫がじたじたと落ちてゐる四 何処へ己が売つて了つた田の中で水鶏(くひな)が鳴いてゐる己は悲しくなつて田の方を見ないで通つて来た元(もと)己が家の畑の中に々と麦が育つてゐる己は悲しくなつて畑の方を見ないで通つて来た己が借金(かり)の為めにとられた杉山が真黒になつて茂つてゐる己は悲しくなつて山の方を見ないで通つて来た己は悲しくなつてもうこの村には居られない己は何処(どこ)へ行かう何故己は死ねずにこの村に居るだらう五 暗い心己が持つてゐた亡父(おや)の形見の煙草入を質屋の隠居が毎日持ち歩いて吸つてゐる己は、それを見るたび胸が一杯になつた己が着てゐた夏外套(インバ)を古着屋の婆(をばばあ)が毎日負ひ歩いて見せてゐる己はそれを聞くたび胸が一杯になつた己の家で飼つて置いた鶏を己が売つてやるとすぐ縊られて喰はれてゐる己は鶏の羽根を見て胸が一杯になつた己はもう希望も欲もなんにも無くなつて了つた生きたくも死にたくもなんともないこの村にさへ居なかつたら己の心はのんびりしよう六 風が吹く己の家のうしろの沼に風が吹く実にしみじみ風が吹く見れば見るほど風が吹く山の方から風が吹く広い河原の砂利(ざり)石に風は鳴り鳴り吹いて来る己が生れたこの村の井戸の釣瓶に風が吹く風は鳴り鳴り吹いてゐる七 丁爺己は少年の頃穀倉(こくぐら)の廂へあがつて雀の巣を毀したことを覚えてゐる巣を毀された親雀は、日が暮れて了つても廂の上にとまつてゐたことも覚えてゐる穀倉は田を売つて了つた同じ年に己が売つて了つた穀倉の跡にはい蓬(よもぎ)が生えてゐる己は庭へ出て見るたび熱い涙が胸にこみあげて来た己は門の屋根の銅(あかがね)を剥して売らうと考へた己は靴を穿いて古金屋(ふるがねや)のある町の方へ出掛けて行つた途中で丁爺に遭つた己は仕方なくて銅の話をした『お前さまの親御に御恩は返えせねえから、せめて――お前さまのお家でも繁昌させてえと――鎮守様にも御願をたててゐるでがす――』丁爺は悲しい顔をして己の顔を見てゐた己もほんたうに悲しくなつた己は古金屋へ行かずに帰つて来た己は庭木を売らうと思つて植木屋をよんで来た丁爺が来た丁爺の目には涙が一杯に浮んでゐた己は堪らなくなつて家の中に駈け込んで一人で泣いた西風が稲の上に毎日吹いた丁爺は己の家の庭へ来ていつも悲しい顔で立つて眺めてゐた己は丁爺に古くから己の家にあつた紫檀の蓋の湯呑を与(や)つた『お前さまの形見でがな――』丁爺も己も一所に泣いた百姓はうれしさうに馬を牽いて歩いてゐる己に楽みのない収穫の秋がたうとう来た己は朝の未(まあ)だ薄暗い内にズツクの鞄を抱(かか)ひて汽車に乗つた腰の屈(かが)んだ丁爺は改札口の欄干(てすり)に伸び上り伸び上り『お前さま、御無事で暮らして下せえ』と己に云つて泣いてゐた八 頬白己が野へ行くたび藪の上にとまつて鳴いてゐた頬白よ己はお前のことをほんたうに懐しく思ふ己はこの村に家も屋敷もなくなつて了つた己は東京の友達を便(たよ)つてゆく今日は別れだ頬白よお前は達者でゐて呉れよ己は東京から二度この村へ帰つて来られるかどうか今のところでは解らない帰つて来ないとしてもお前はいつまでも達者でゐて呉れよ己が東京へ行つて何処に住むようになるか未だ解らない本郷に住んでも浅草に住んでもこの村のことは忘れて了つても頬白よ己はお前が懐しくて忘られない畑の麦が黄ばんでも、田の稲が黄ばんでも他人(ひと)のものは喰はないで呉れよこの村にはもう己の田畑(てんばた)はないお前は何を喰つて暮らすだらう虫でも拾つて喰つて生きてゐて呉れろよ己が東京にも生活(くらし)かねて東京に居ないと聞いても頬白よ決して悲しんで呉れるなお前は達者でいつまでもこの村で暮して呉れろよ九 猫よ東京に来て見たものの――生活(くらせ)る的(あて)はない郷里(くに)に家でも――あるではなしどうしよう木更津に――お前の伯父がある筈だ己も一所に連れて行つて呉れぬか猫よ十 夏卯の花が咲く杜鵑(ほととぎす)が啼く夏が来た沼の中に菖蒲(あやめ)の花も咲いてゐるどつちにしろここには永く居られない己に約束の夏が来たこの家は明日にも空けて返さねばならぬ己に余裕の金があらばせめて夏中でもここの葛飾で暮らしたかつた己はもう諦めて神戸へ行かう己がたつて行つた後(あと)で誰が来てこの家に住むだらう自分の家を失(なくし)て了つた己は他人の家でも住み馴れた家は恋しい一生涯借家住ひで暮らさねばならない己は旅烏のやうだ去年の夏は東京に居て今年の今は葛飾に居る他人の知らない涙が己の胸にはいつも一杯に溜つてゐるこれが自分のものと定(きま)つた家があつたなら己はどんなに嬉しいだらうまた住み馴れたこの家をたつて知らぬ他国に行かねばならぬ己に悲しい夏が来た...   酒場の中からどんたりどんたり話声が聞えて来る空樽に腰を掛けて冷酒をあふつてゐた目の苦茶苦茶した浅黄服を着た男が微酔機嫌で酒場の中から出て来たオ、お喜乃か、ウム、美い綺縹だなオイ兄え己ア一足先き帰るよ千鳥足で行つて了つたホ、権が来だ!年配の男は、向ふを見ながらお喜乃に顋でしやくつた権はひよつこり酒場の前にやつて来たお喜乃は駈け寄つて権の手を握つた権さんお前どうした、工場から暇が出たのかお喜乃は悲しさうに権の顔を眺めてゐる権もお喜乃の顔を眺めてゐるお喜乃の目からはらはらと涙が零れた権さん、工場やめてどうする嘘だ、嘘だお前大坂へ帰へつちやンだらうお喜乃はほろほろ声になつてゐる夕焼の空は一面に赤く燃え立つてゐた権は何んにも云はずに下を向いて立つてゐる権さん、お前、大坂へ帰るならわたしも、一所に連れてつてお呉れな又してもお喜乃の声は顫えてゐるお喜乃は夕方になると赤い花簪をさして、酒場の前に立つてゐたが権はそれつきり遂ひぞ酒場に来なかつた忠義の犬日比谷公園の広ツ場に編みあげの赤い靴を穿き祖母さんに連れられて美晴子さんが遊んでる浅い弱い春の日は鏡のやうに晴れてゐた中学生が五六人テニスネツトを引つ張つて組に分れて遊んでる軽くボールはぽんぽんと向ふにこつちに飛んでゐた祖母さんは、遠くの方へ退つ去つて腰をかがめて見せてゐるテニスコートの向ふから足の太い、毛の長い強さうな犬がさつさと歩つて来た美晴子さんは、活動の『忠義の犬』を思ひ出し丸い目をして見て居つたあの犬も忠義の犬になるか知ら同じやうに耳も垂れてゐるし口も大きいし――美晴子さんは目をはなさずに眺めてゐる中学生のラケツトが何んな途端かぐんと来て犬の後に落つこちた犬は走つてラケツトを口に銜へて立つてゐる美晴子さんは小さな声で祖母さんに『忠義の犬』の話をした小さな出来事足の短い狛犬はポチに噛ませてやりませう糸のたるんだ風船と空気のぬけた護謨毬はタマに噛ませてやりませう弾機の廻らぬ自働車)は銑葉の台へ載せたまま馬車に轣かせてやりませう翼のゆがんだ木兎は牛に踏ませてやりませうか、馬に踏ませてやりませうか、うしろの沼へ捨てませうか飛べなくなつた飛行機と共に窓から投げませう硝子の中の人形も明日はお暇やりませう何つかの島へ着くやうに島の人形になるやうに桐の小函に帆をかけて――大川の水に流してやりませう蝙蝠蝙蝠よ、蝙蝠よ井戸端に蚊柱が立つてゐる早く来て喰はないか蝙蝠の家は何処だ山か里か何故咄さぬ蚊柱が立たば迎ひに行くぞすぐに来て喰へよ呼んでも、呼んでも蝙蝠は居ない臍をまげて隠れてゐる臍をまげた蝙蝠に蚊柱は喰はせるな早くバケツで水かけろ螢の親父が飛んでゐる蚊柱が立つても蝙蝠に咄すな呼んでも呼んでも来ない蝙蝠が来たなら跣足になつて追つ蒐けろ縁側彼はお針をしてゐる妻君に爪の伸びた手を出して鋏を借せと云つた鋏は妻君の膝のあたりにある若い妻君は彼の手を眺めるやうに見て笑ひながら鋏をとつて渡した彼は日の当つてゐる縁側に胡座をかいてパチリパチリ切り初めた爪は遠くまで飛んで皆んな庭の上に落ちる妻君はそーつと彼の後に来て顔を覘いてゐた彼は爪の奇麗になつた手を出して見せた若い妻君は黙つて立つて笑つてゐるわしの隣人彦兵衛彦兵衛が、家の前の畑に蘿蔔の種を蒔いてゐると郵便配達が来た彦兵衛は汚れた手で葉書を受け取つて眺めてゐる配達は行つて了つた電車の車掌に及第した東京の忰からの葉書だ彦兵衛の顔はにこにこした囲爐裡の中に麦鍋が泡立つて煮え零れてるお霜お霜が畠に馬鈴薯を掘つてゐると馬を牽いた男が弄戯つて通つてゆくお霜が土手に足を出して休んでゐると前の男が馬を牽いて帰つて来たまた弄戯つて通つてゆくお霜がもう帰らうとすると藪の中に男は首を出してゐた留さん東京で流行る――サイノロジーと云ふ田舎にはない新言葉西洋の煙草の名でもあるか知らと留さんは思つてゐた留さんが田うなひに出て行つた後で頬の赤い嬶が長々と昼寝をしてゐるボーリン衝きの若い監督はサイノロジーと云つて笑つて行く留さんは解せずで解せずで堪らないその晩、夕飯を喰ひながら嬶に咄した嬶は飴菓子を噛りながらこれも解せずで――首を抂げたお艶お艶が風呂にはいつてゐると若い男がだましに来た小さな声でだましてゐるお艶がざぶり湯をかけてやると男はうろうろしてゐたが裏からすーつと逃げて行つた馬は厩に馬堰棒をがらんがらんと鳴らしてゐる天の川は北から西へ流れてゐた六蔵六蔵が家の前に立つて田の稲を眺めながら群雀のことを考へてゐると――群雀の一団が飛んで来て稲の上にかぶさるやうに下りた六蔵は駈けて行つて鳴子の綱を引つ張つた群雀はパツと飛び上つて行つて了つたこんな日が幾日も続いた田に稲がなくなると群雀は来なくなつた六蔵は何んにも考へずに寝そべつて煙草を吹かしてゐる米松米松が鍬を担いで野良から昼餉に帰つて来た裏戸が開けつ放しになつてゐる鶏が竈の上へあがつて鍋の中から麦飯をつつき散らして喰つてゐた隣の金が家に小間物屋が来てゐる嬶の笑ふ声が聞えた米松は忌々しげに泥手で煙草を吸つてゐる嬶は西瓜を喰ひながら帯の間に巾着の紐をぶら下げて帰つて来た鶏が厩の前へ駈けて来て立つてゐる娘と劉さん娘劉さん赤ん坊が生れたならばどうしませう何処へたのんで育てませう劉ワタシ ワカラナイ アナタ スル ヨロシー娘横浜の叔母さん所へ遣りませう新しい一の一も着せて遣りませう娘叔母さんに断られたらどうしませう劉ワタシ クニ トホイ ワカリマセン娘悲しいけれど捨てませう顔の見えない闇の晩ミルクの管を哺ませて――公園のベンチの上に捨てませう娘お月夜の晩であつたらどうしませうお月夜が続いて居たらどうしませう育てませうか捨てましよか劉ワタシ ニホン タツ アナタ タノム娘薄情な、薄情な劉さん思ひ切つて――悲しいけれど捨てませうベンチの上に青々と月がさしたら泣くでせうわたしの顔を屹度眺めて泣くでせう劉さん劉さんその時のわたしの心はどんなでせう磯の上親恋しがりの子雀よ親が恋しく海へ来たのか海へはいつて蛤に化つて了つた親雀はお前のことはもう忘れてゐるぞ幾ら待つてゐても元の親には逢はれないのだ帰れ、帰れ海の端で日が暮れたら子雀よほんたうにはぐれ雀になつて了ふぞ親の古巣に妹はどうした、姉は居ないかもう日は山から暮れて来る海鵯よ子雀は磯にとまつて動かないだまして山へ帰さぬか百姓の足百姓の足は怖いから見たら逃げろと親蛙が咄して聞かせた子蛙は毎日畔の上に匍ひ上つて眺めてゐたが百姓の足は来なかつたある夕方子蛙が沼の端で遊んでゐると百姓が鍬を担いでやつて来た百姓の大きな足が子蛙の後からずしんずしんと地響を打つて歩いて来る子蛙は堪らなくなつて沼の中に飛び込んで顫え顫え隠れてゐた百姓はずんずん行つて了つた子蛙が眼子菜の茎に捉つて泣いてゐると親蛙は田の中から跳ねて来て一所に連れて帰つた怖い百姓の足が毎日田の中に這入つて来た百姓はたうとう子蛙の居所までも跡方なしに耕して了つたそれでも子蛙は生れた田の中が自分の家だと思つて居たら皆な怖い足の百姓のものだと親蛙に聞かされた手若い女は水菓子屋の表に立つてパイナツプルを買つてゐる若い男は店の中にはいつてパイナツプルを買つてゐる男が取り次いでくれたパイナツプルを受けとるとき女の手が顫えた男の手女の手女の手は顫える畑ン中真昼間でごわせう畑ン中に、田鼠が一匹斑犬に掘りぞべられてイヤハヤむんぐらむんぐら居やあした畑の土は、開闢このかた、黒いもんかどなもんか真の所、烏に聞いて見やあすべい畑ン中は、青空天上、不思議はごわすめえ喉笛鳴らした、ケーケーケー鶏が走つたこりやまた事かと魂消払つて居りやあした蜻蛉が一匹追つかけ廻つた、啄くわ啄くわぶつ飛びあがつた、飛んだわ飛んだわ蜻蛉は御運でござりあした地主様の一人娘が娘に二種何処にごわせうどどの詰りがエヘン孕み女になりやあした畑ン中の豆ン花何なもんだ朝つぱらから何事ぶたずにべろりと咲いてござりやあす山火事野兎の子と雉の子と住んでる山が山火事だ早く逃げぬか焼け死ぬぞ先刻鳴き鳴き雉の子は飛んで逃げた野兎の子はどうした山の上に走り腐つて逃げたのが野兎の子でなかつたかあれは宿なしの山鼬だ鼬だと鼻ン先が黒い筈だ黒いとも、黒いとも真黒だ駈けてつて見ろ山一面に火の海だ逃げ道がなくなる野兎の子はどうした山に居るのか居ないのか息を切つて逃げて来た何方の方へ逃げてつた雉の子が飛んでつた山の方へ夢中になつて走つたぞ己の家一 その頃己が東京から帰つてゆくと鶏小舎の側に無花果が紫色に熟してゐた己の家の穀倉には米と麦が向ひ合つて重ねてあつた己は背戸の杉山に懸巣が来て鳴くのがうれしくて堪らなかつた己が馬に乗つて野にゆくと頬白は藪の上に囀つてゐた己は座敷の丸窓を開けて紅い芙蓉の花を眺めながら毎日、本を読んで遊んでゐた丁爺が餅を搗いて持つて来て呉れた己が飛行機の話をするとほんたうとは思はずに帰つて行つた己は巻莨を吹かしながら村の子供等を集めて庭の植込の中を歩き廻つて遊んだ己は日暮方になると裏の田甫の中に立つてバーンスの詩の純朴に微笑んでゐた己は百年も二百年も斯して生きてゐたいと思つた二 篠藪蝸牛よ黙り腐つた蝸牛よ、渦を巻いてゐる蝸牛よ何が恋しい篠藪にさら、さら、さらと雨が降る夢現に己は暮らした蝸牛よ己に悲しいコスモスの花と花とに雨が降るもう、己の家は最終だ蝸牛よ田も売らう、畑も売らう篠藪にさら、さら、さらと雨が降る三 霜の朝厩の前の葱畑に霜が真白に降つてゐた己が顔を洗つてゐると鵯が来て南天の実を食つてゐる己が売つて了つた馬を博労が下駄を穿いて牽きに来た馬は博労に牽かれて門を出ながら悲しさうに厩の方を振り向いて見てゐた己は門の外まで駈けて行つて見た冷たい朝日がさしてゐる田甫の中を馬は首を垂れて博労に牽かれて行つた己は茫然として縁側に腰を掛けてゐた鵯が南天の木から囲垣の椿の木へ飛んで行つて己の方を向いて鳴いてゐた己の家の囲垣は樫の木を売つて了つてからほんたうにみそぼらしくなつて了つた緑青の食んだ銅の門の垂木から霜解の雫がじたじたと落ちてゐる四 何処へ己が売つて了つた田の中で水鶏が鳴いてゐる己は悲しくなつて田の方を見ないで通つて来た元己が家の畑の中に青々と麦が育つてゐる己は悲しくなつて畑の方を見ないで通つて来た己が借金の為めにとられた杉山が真黒になつて茂つてゐる己は悲しくなつて山の方を見ないで通つて来た己は悲しくなつてもうこの村には居られない己は何処へ行かう何故己は死ねずにこの村に居るだらう五 暗い心己が持つてゐた亡父の形見の煙草入を質屋の隠居が毎日持ち歩いて吸つてゐる己は、それを見るたび胸が一杯になつた己が着てゐた夏外套を古着屋の婆が毎日負ひ歩いて見せてゐる己はそれを聞くたび胸が一杯になつた己の家で飼つて置いた鶏を己が売つてやるとすぐ縊られて喰はれてゐる己は鶏の羽根を見て胸が一杯になつた己はもう希望も欲もなんにも無くなつて了つた生きたくも死にたくもなんともないこの村にさへ居なかつたら己の心はのんびりしよう六 風が吹く己の家のうしろの沼に風が吹く実にしみじみ風が吹く見れば見るほど風が吹く山の方から風が吹く広い河原の砂利石に風は鳴り鳴り吹いて来る己が生れたこの村の井戸の釣瓶に風が吹く風は鳴り鳴り吹いてゐる七 丁爺己は少年の頃穀倉の廂へあがつて雀の巣を毀したことを覚えてゐる巣を毀された親雀は、日が暮れて了つても廂の上にとまつてゐたことも覚えてゐる穀倉は田を売つて了つた同じ年に己が売つて了つた穀倉の跡には青い蓬が生えてゐる己は庭へ出て見るたび熱い涙が胸にこみあげて来た己は門の屋根の銅を剥して売らうと考へた己は靴を穿いて古金屋のある町の方へ出掛けて行つた途中で丁爺に遭つた己は仕方なくて銅の話をした『お前さまの親御に御恩は返えせねえから、せめて――お前さまのお家でも繁昌させてえと――鎮守様にも御願をたててゐるでがす――』丁爺は悲しい顔をして己の顔を見てゐた己もほんたうに悲しくなつた己は古金屋へ行かずに帰つて来た己は庭木を売らうと思つて植木屋をよんで来た丁爺が来た丁爺の目には涙が一杯に浮んでゐた己は堪らなくなつて家の中に駈け込んで一人で泣いた西風が稲の上に毎日吹いた丁爺は己の家の庭へ来ていつも悲しい顔で立つて眺めてゐた己は丁爺に古くから己の家にあつた紫檀の蓋の湯呑を与つた『お前さまの形見でがな――』丁爺も己も一所に泣いた百姓はうれしさうに馬を牽いて歩いてゐる己に楽みのない収穫の秋がたうとう来た己は朝の未だ薄暗い内にズツクの鞄を抱ひて汽車に乗つた腰の屈んだ丁爺は改札口の欄干に伸び上り伸び上り『お前さま、御無事で暮らして下せえ』と己に云つて泣いてゐた八 頬白己が野へ行くたび藪の上にとまつて鳴いてゐた頬白よ己はお前のことをほんたうに懐しく思ふ己はこの村に家も屋敷もなくなつて了つた己は東京の友達を便つてゆく今日は別れだ頬白よお前は達者でゐて呉れよ己は東京から二度この村へ帰つて来られるかどうか今のところでは解らない帰つて来ないとしてもお前はいつまでも達者でゐて呉れよ己が東京へ行つて何処に住むようになるか未だ解らない本郷に住んでも浅草に住んでもこの村のことは忘れて了つても頬白よ己はお前が懐しくて忘られない畑の麦が黄ばんでも、田の稲が黄ばんでも他人のものは喰はないで呉れよこの村にはもう己の田畑はないお前は何を喰つて暮らすだらう虫でも拾つて喰つて生きてゐて呉れろよ己が東京にも生活かねて東京に居ないと聞いても頬白よ決して悲しんで呉れるなお前は達者でいつまでもこの村で暮して呉れろよ九 猫よ東京に来て見たものの――生活る的はない郷里に家でも――あるではなしどうしよう木更津に――お前の伯父がある筈だ己も一所に連れて行つて呉れぬか猫よ十 夏卯の花が咲く杜鵑が啼く夏が来た沼の中に菖蒲の花も咲いてゐるどつちにしろここには永く居られない己に約束の夏が来たこの家は明日にも空けて返さねばならぬ己に余裕の金があらばせめて夏中でもここの葛飾で暮らしたかつた己はもう諦めて神戸へ行かう己がたつて行つた後で誰が来てこの家に住むだらう自分の家を失て了つた己は他人の家でも住み馴れた家は恋しい一生涯借家住ひで暮らさねばならない己は旅烏のやうだ去年の夏は東京に居て今年の今は葛飾に居る他人の知らない涙が己の胸にはいつも一杯に溜つてゐるこれが自分のものと定つた家があつたなら己はどんなに嬉しいだらうまた住み馴れたこの家をたつて知らぬ他国に行かねばならぬ己に悲しい夏が来たの読み方
野口雨情 「都会と田園」

...白きインテリは喜んだかも知れないが...   青白きインテリは喜んだかも知れないがの読み方
野村胡堂 「胡堂百話」

...骸(なきがら)に黒子(ほくろ)の代りに刺までして...   骸に黒子の代りに刺青までしての読み方
野村胡堂 「錢形平次捕物控」

...遥かに浪漫的の春性に富んでいるという事実である...   遥かに浪漫的の青春性に富んでいるという事実であるの読み方
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」

...い灯をともした船がいくつもねむっている...   青い灯をともした船がいくつもねむっているの読み方
林芙美子 「放浪記(初出)」

...その空はまるで虚偽のやうに思はれた...   その青空はまるで虚偽のやうに思はれたの読み方
原民喜 「廃墟から」

...私はこのまま帰ってしまった方がいい……それにしても夫人はいまの年の帰ってくるまで待っていようと思った...   私はこのまま帰ってしまった方がいい……それにしても夫人はいまの青年の帰ってくるまで待っていようと思ったの読み方
堀辰雄 「聖家族」

...大きな穴から空が見えるじゃないか...   大きな穴から青空が見えるじゃないかの読み方
松永延造 「職工と微笑」

...草の茂ったこちら側の堤(どて)にある二本の太い桜の間に...   青草の茂ったこちら側の堤にある二本の太い桜の間にの読み方
「一本の花」

...「何事でございますか」範宴は、何となく、蓮院のうちに、静中の動とでもいうような波躁(なみさわ)ぎを感じながら師の眉を見た...   「何事でございますか」範宴は、何となく、青蓮院のうちに、静中の動とでもいうような波躁ぎを感じながら師の眉を見たの読み方
吉川英治 「親鸞」

...そして母を取巻いてぞろぞろとい葉や蔓と共にこれを引出す彼等のそれぞれを思い浮べると同時に...   そして母を取巻いてぞろぞろと青い葉や蔓と共にこれを引出す彼等のそれぞれを思い浮べると同時にの読み方
若山牧水 「みなかみ紀行」

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