...空だとばかり思っていた、上部の靄の中を、案外にもそこが海面であって、フワフワと幽霊の様な、大きな白帆(しらほ)が滑って行ったりした...
江戸川乱歩 「押絵と旅する男」
...此の家で初めて靄山に弟子入りをした男がありました...
薄田泣菫 「質屋の通帳」
...それでも一抹(いちまつ)の濃い靄はなお白くその辺を逍遥(さまよ)うていた...
高浜虚子 「別府温泉」
...無限の同情と靄々たる和気とを以て満たされた近年の盛会であつた...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...外の靄(もや)も室にはいってきて...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...いにしえの地獄の靄(もや)の中には...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...どこから来たか一隊の人が闇と靄との中から打って出でました...
中里介山 「大菩薩峠」
...と米友は心得面(こころえがお)に杖槍を拾い上げたが、その犬に似た真黒いものの影は、靄の中に消えて、唸り声だけが尾を引いて物凄(ものすご)い...
中里介山 「大菩薩峠」
...徒に旦出でて雲靄の中に彷徨す...
長塚節 「草津行」
...それが夕暮の靄(もや)に融(と)け込んで行く趣(おもむき)なども忘れる事ができない...
夏目漱石 「硝子戸の中」
...(このひとときが破滅への進行のひとときとしても……)靄のなかに動いている人々の影は陰惨ななかにも...
原民喜 「死のなかの風景」
...靄を含んだ柔らかい空気……それは僕の眼の前にある...
原民喜 「魔のひととき」
...水面に沿って淡い亡霊のような靄が昇り...
A. ビアス A.Bierce The Creative CAT 訳 「チカモーガ」
...今箱根の谷から靄の上つて来る様子を見ると少しも躊躇することなく為たいと思ふことを迷はず断行するものの様だ...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...覆面(ふくめん)の船団(せんだん)一夜靄(よもや)は深くたれこめていた...
吉川英治 「三国志」
...わしは未来の靄(もや)に姿をぼかして行こう...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...不審の靄(もや)につつまれてしまった...
吉川英治 「宮本武蔵」
...暮靄(ぼあい)につつまれた大和の山々は...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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