...牧牛者は氣の毒さうに禮を云つて霧の中に隱れて行つた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...途(みち)に一騎の驕将を懲(こ)らすといふ一段を五行或は四行の大字にものしぬるに字行(じのかたち)もシドロモドロにて且(かつ)墨の続(つ)かぬ処ありて読み難しと云へば其(そ)を宅眷(やから)に補はせなどしぬるほどに十一月(しもつき)に至りては宛(さな)がら雲霧の中に在る如く...
内田魯庵 「八犬伝談余」
...劒を振つて水を清めてその水を口に含んで吐く霧の中に神靈が出現するとする...
稗田の阿礼、太の安万侶 「古事記」
...これ等の生物が霧の中に消え去ったのか...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...眼前の闇黒(あんこく)な霧の中にある何物かの影を認めようとあせっているのである...
寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
...霧の中に響いていて...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...孤独な運命の人々をのみ去るあの冷たい霧の中に...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...霧の中に降りたらしい...
中谷宇吉郎 「アラスカ通信」
...今まで霧の中に閉じ込まれたものが...
夏目漱石 「私の個人主義」
...いつしか日は霧の中に暮れてしまつた...
野口雨情 「大利根八十里を溯る」
...霧の中に消えて行くのではないかと思われた...
火野葦平 「花と龍」
...霧の中に消えているではありませんか...
宮沢賢治 「風の又三郎」
...ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち...
宮沢賢治 「銀河鐵道の夜」
...ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金(きん)の円光をもった電気栗鼠(りす)が可愛(かあい)い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした...
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
...朝霧の中に迷つた羊でもよぶのであらうか...
吉江喬松 「山岳美觀」
...この濃霧の中に閉ぢ籠められてゐた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...ようやく霧の中に...
吉川英治 「私本太平記」
...自分が、きょうまで、霧の中に、刻苦してきたことは、要するに、それである...
吉川英治 「親鸞」
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