...霧晴れなば、そこより街(なみき)の長く續けるを見給ふならん...
ハンス・クリスチアン・アンデルセン Hans Christian Andersen 森鴎外訳 「即興詩人」
...突然霧がわいて来た...
石川欣一 「可愛い山」
...霧がなければ、影は見えないが、すぐ前に濃い霧があると、これが映写幕の働きのようなことをして、その上に影がうつるんだ...
海野十三 「地球盗難」
......
立原道造 「暁と夕の詩」
...黒い霧とも壁とも判らない物に四辺(あたり)を囲まれた中に...
田中貢太郎 「令狐生冥夢録」
...遠くは煙霧にかすみ...
谷譲次 「踊る地平線」
...眼前の闇黒(あんこく)な霧の中にある何物かの影を認めようとあせっているのである...
寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
...三十五霧深い夜だった...
豊島与志雄 「反抗」
...時として地極と地帯に飽き果てた殉教者・海はその歔欷(すすりなき)でもつて私をあやし、黄色い吸口のある仄暗い花をばかざしたその時私は膝つく女のやうであつた半島はわが船近く揺らぎつつ金褐の目の怪鳥の糞と争ひを振り落とす、かくてまた漂ひゆけば、わが細綱を横切つて水死人の幾人か後方(しりへ)にと流れて行つた……私としてからが浦々の乱れた髪に踏み迷ひ鳥も棲まはぬ気圏(そら)までも颶風((ぐふう))によつて投げられたらば海防艦(モニトル)もハンザの船も水に酔つた私の屍骸(むくろ)を救つてくれはしないであらう、思ひのままに、煙吹き、紫色の霧立てて、私は、詩人等に美味しいジャミや、太陽の蘇苔(こけ)や青空の鼻涕(はな)を呉れる壁のやうに赤らんだ空の中をずんずん進んだ、電気と閃く星を著け、黒い海馬に衛(まも)られて、狂へる小舟は走つてゐた、七月が、丸太ン棒で打つかとばかり燃える漏斗のかたちした紺青の空を揺るがせた時、私は慄へてゐた、五十里の彼方にてベヘモと渦潮(うづ)の発情の気色(けはひ)がすると、ああ永遠に、青き不動を紡ぐ海よ、昔ながらの欄干に倚((よ))る欧羅巴((ヨーロッパ))が私は恋しいよ...
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー Jean Nicolas Arthur Rimbaud 中原中也訳 「ランボオ詩集」
...しかし霧の人工消散は幾分は出来たことになる...
中谷宇吉郎 「霧を消す話」
...夜霧が白い...
林芙美子 「新版 放浪記」
...八月も末に近い霧の深い夕方...
久生十蘭 「ハムレット」
...やがてその霧がさあと一気に駈け下りて来て...
堀辰雄 「美しい村」
...但霧渓は養父の行状を撰ぶに当つて...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...霧渓の行状に拠らなかつた...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...霧のふかい朝で、岩根山の斜面は濃い乳色の幕に掩われていたが、揺曳(ようえい)する霧のあいだからときおり燃えるような紅葉が鮮かに見えた...
山本周五郎 「契りきぬ」
...乱軍をつつむ白い霧の中へ駈け入ってしまった...
吉川英治 「大谷刑部」
...見張っていてくれ」「はい」と、彼が、そこへ首を出している間に、霰(あられ)でも走るような軽い音が、屋根に消えた――ぽうんと、闇の外へ、雲霧は、もう飛び降りていた...
吉川英治 「雲霧閻魔帳」
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