...右手かすかに霞む浅間まで...
石川欣一 「可愛い山」
...おぼろ/\と霞むまで...
泉鏡花 「紫陽花」
...霞むやうな銀の鈴の遠音(とほね)の断続...
大手拓次 「「香水の表情」に就いて」
...またもや遠くに霞む椅子をめざして新しい長途の歩行に発足するだけだ...
谷譲次 「踊る地平線」
...「八重だつ雲に世をへだて過しゝ月日いかなりし横雲わかるしのゝめにきくは雲雀の春の歌霞む川邊の夕暮に訪ふは菫の花の床...
土井晩翠 「天地有情」
...言換ればお道具ばかり沢山あつて朧ろに霞む埃が附いててそれが近代的リュックスなのであつて...
中原中也 「音楽と世態」
...揺れる前髪へ、ほの白く霞む額、そして燃える瞳と、真紅に熟れた唇の前に、平次は眼をつぶって寂然と腕を拱ぬいているのでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...碧(あを)い單衣(ひとへ)に赤い帶も印象的ですが、それよりもほの白く清らかな頬や、霞む眉や、少し脅えてはゐるが、聰明らしい眼が、咄嗟(とつさ)の間ながら、平次に素晴らしい印象を與へてくれたのです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...月に霞む遠くの砂漠へ小手をかざす)ちぇっ!木華里(ムカリ)め! 何をしているのだ...
林不忘 「若き日の成吉思汗」
...忽ち花片(はなびら)の渦が一団の胡蝶になつて見霞む野原の奥へ消え去つたり...
牧野信一 「熱い風」
...見霞むデイライト・スクリーンの真ン中にぽつんとシルエツトになつて映り出てゐるので...
牧野信一 「南風譜」
...青霞む遥か彼方へ去ってしまったのであった...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...商品として賣り出す村があつた(霞む月星)...
柳田國男 「食料名彙」
...見霞むような奥行のあることを...
柳田國男 「和州地名談」
...霞むばかり蝟集(いしゅう)して...
吉川英治 「新書太閤記」
...霞む神路山の方へ欠伸(あくび)をしていた...
吉川英治 「宮本武蔵」
...黒吉は、その背後(うしろ)姿が、ぼーっと霞むと、膨らんだ瞼から熱いものが、頬を伝った...
蘭郁二郎 「夢鬼」
...雪解水(ゆきげみづ)岸にあふれてすゑ霞む浅瀬石川(あぜいしがは)の鱒とりの群むら山の峡より見ゆるしらゆきの岩木が峰に霞たなびく相模三浦半島のさびしい漁村に二年ほど移り住んでゐた事があつた...
若山牧水 「渓をおもふ」
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