...冷吉が零した水の滴りを拭いた...
鈴木三重吉 「赤い鳥」
...ビールを零したのか...
高濱虚子 「俳諧師」
...無言でぼろぼろ大粒の涙を零し始めた...
田中英光 「箱根の山」
...長く一緒にいる男がまた取り外してしまったことを零しはじめた...
徳田秋声 「足迹」
...其時例のそゝくさとする癖の故人は夥か疊に灰を零した...
長塚節 「記憶のまゝ」
...枡と枡との境の板よりもウンと受け板が手前に出してさへあれば零しはしまいといふ校長の意見通りにその受け板は取附けられた...
中原中也 「校長」
...ベソをかいて零した...
羽志主水 「越後獅子」
...義兄もほろりと涙を零した...
原民喜 「焔」
...病妻はよく私のことを零した...
原民喜 「忘れがたみ」
...ぽろ/\と大粒の涙を零してゐたではないか...
牧野信一 「サクラの花びら」
...かう誰かに零してゐるのを耳にして...
牧野信一 「余話」
...妻はつねに零してゐた...
正宗白鳥 「水不足」
...つれの娘と堀のをばさまに挨拶をし顏ぢゆうに笑ひを零し...
室生犀星 「巷の子」
...道路その一紫ぐんださくらの枝をとある家の垣根越しにながめては通る毎日のやうにときには悲しげに見る毎日かぜが荒く冷たいひびきをもつてゐるなかなか温かくはならない紫ぐんだ櫻の枝はがぢがぢとしてゐる道路その二褐いろの板塀からピアノが鳴つてゐるやれたおしめが旗のやうにさがつてゐるそこでピアノはいよいよ美(き)れいに鳴る門の前には八百屋が零して行つたばかりの青菜や葱の屑が幾日もそのままにされてゐる...
室生犀星 「星より來れる者」
...つつましい文字のやうにその指を組みいま じぶんの脚で立つてゐた空にとどいた梢に天使のやうな雲がふとつつかかると花の咲かない樹樹はそのほそい指のあひだからおびただしいいのちを零した38.11.20...
森川義信 「樹樹」
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