...玉屋の錦木(にしきぎ)と云ふ華魁(おいらん)に馴染(なじ)んでゐた...
芥川龍之介 「孤独地獄」
...禅超は錦木(にしきぎ)のしかけを羽織つて...
芥川龍之介 「孤独地獄」
...錦木の許(もと)へ金剛経(こんがうきやう)の疏抄(そせう)を一冊忘れて行つた...
芥川龍之介 「孤独地獄」
...若葉した錦木らしい木が板塀に壓しつけられるやうになつて茂つてゐる...
高濱虚子 「俳諧師」
...菖蒲花開かむとし、錦木花をつく...
永井荷風 「断腸亭日乗」
......
長塚節 「長塚節歌集 中」
...近頃売り出しの小説家錦木幸麿(さちまろ)――と深井少年はすぐ覚りました...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...「イーエ、もう」「第一、あなたの崇拝者の多いのには驚きましたよ、どこのサロンへ行っても、近頃はあなたの話で持ち切りです」「まあ先生極(きま)りが悪い、そんな事は止して下さい、今も深井さんにお引合せしたんですが、私の第一番のパトロンは、それ……あの方、聞えるでしょう、リンデンバームのメロディが……」高木博士は一寸(ちょっと)小首を傾けましたが、「あれは、ハーモニカでは無いですか」「え、ハーモニカですワ、あのハーモニカを吹いてる按摩の小僧さんが、私の一番大事なパトロンなんです」「ほう、それは面白い、深い仔細(しさい)がありそうですね、差支(さしつか)えなかったら聴かして下さい」美しい歌い手とドクトルが、こんな話をして居る間に、錦木家の若様は、そっと窓へ行って、ハーモニカを吹いて居るパトロンの姿を見て居ましたが、やがて酢っぱいような顔をして座に戻って来ました...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...決して惜しいとは思いません」「……それは結構なお心掛けで……」錦木幸麿の口吻(くちぶり)には...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...併(しか)しそれは決して不思議な事でも何んでもありません」錦木幸麿は少し反抗的な調子ですが...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...冷かしなんかじゃありませんワ」「失礼ですが――」苦々しそうにして居た錦木幸麿は...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...あなたは一体幾つの心臓を要求されるのです」錦木幸麿の言葉は激越を極めました...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...最初の内は、巧みに鋭鋒を避けて、錦木の言葉をはぐらかそうとして居た駒鳥絹枝も、遂にはその熱情的な言葉に引入れられて、俯向(うつむ)いたまま神妙に聴き入って居りましたが、「錦木さん、お許し下さい、私はわけがあって、どなたも選ぶことが出来ないのです」「エッ、何を言われるのです、それは何(ど)ういう意味です」「わけは申し上げられません、が、あなたがお苦しいように、私の胸も張り裂けるような思いです」世にも美しい歌い手は、声をあげてその場に泣き崩れてしまいました...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...高木博士も錦木幸麿も見えません...
野村胡堂 「焔の中に歌う」
...錦木は牡丹色に萩は黄色にもみぢしてゐる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...そのうちに錦木の紅は黒く消えてしまつて萩もみぢの黄色のみが仄かに浮き出して来るのである...
平野萬里 「晶子鑑賞」
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