...車を馬に曳かせて春の野路を走らせてゐたことがあつた...
薄田泣菫 「独楽園」
...私はよく野路を歩いてゐて...
薄田泣菫 「独楽園」
...その二つの野路がいつまで行っても出逢わぬという点に私の心はさびしく躍るのでありまして...
高浜虚子 「俳句の作りよう」
...思ひがけない傍系の野路からひよつこり出て来て...
太宰治 「津軽」
...故郷の春の野路を歩くのも...
太宰治 「津軽」
...すると私は、今更のように在りし日の母の俤(おもかげ)を偲(しの)び、済まない事をしたのを感じて、再び悔恨の涙が堰(せ)きあえず、あまり泣くので極(き)まりが悪いので、そっとうしろの裏山へ登って、少年時代の思い出に充(み)ちた森や、野路(のじ)や、畑の景色を瞰(み)おろしながら、そこでさめざめと泣きつづけたりするのでした...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...涙にあまる思(二)とは歌ふをきゝぬ野路の花...
土井晩翠 「天地有情」
...五個(ごか)までくれば石下(いしげ)への半分道でこゝからは野路ばかりになる...
長塚節 「月見の夕」
...陽炎(かげろう)や名も知らぬ虫の白き飛ぶ更衣(ころもがえ)野路(のじ)の人はつかに白し絶頂の城たのもしき若葉かな鮒鮓(ふなずし)や彦根(ひこね)の城に雲かかる愁ひつつ岡に登れば花いばら甲斐ヶ嶺(かいがね)や穂蓼(ほたで)の上を塩車(しおぐるま)俳句というものを全く知らず...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...ふるへる めづらしい野路のくさばなおもたく雨にぬれた空氣の中にひろがるひとつの音色なやましき女のなきごゑはそこにもきこえて春はしつとりとふくらんでくるやうだ...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...野路をつないで架った橋の袂(たもと)で黒い影が待ちうけていて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...野路を群れて行くさまは絵であった...
柳田国男 「雪国の春」
...半里もある駅からの野路を...
横光利一 「夜の靴」
...何やら佇(たたず)み合って」犬上郡の野路をすぎ...
吉川英治 「私本太平記」
...「長の野路(のじ)やら峠やら...
吉川英治 「私本太平記」
...嬰児(やや)が乳をせがみ出す頃……」野路をいそぐ男の胸に...
吉川英治 「私本太平記」
...わが夫(つま)は何処の野路を……?」思うにつけ...
吉川英治 「日本名婦伝」
...熊野路一帶は海岸から急に聳え立つた嶮山のために大洋の氣を受けて常に雨が多いのださうだが...
若山牧水 「熊野奈智山」
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