...これも誠に遁れ難い定業(じょうごう)ででもございましたろう...
芥川龍之介 「邪宗門」
...彼はその部屋から遁れ出て...
スティーヴンスン 佐藤緑葉訳 「帽子箱の話」
...はい、これは楠の一門の、篠崎六郎左衛門の子供でございますが、父になります者は、わらわが三歳の時、楠殿と仲違いをしまして、世を遁れて、今に行くえが知れないのでございます、此の程はお母さま一人に添いながら、浮世を明かし暮らしておりましたのに、有為無常のならいの悲しさは、そのお母さまにさえ先立たれて、今日で最早や三日になります、お骨を拾う人もございませんものですから、弟と二人で拾いまして、此の箱の中に入れましたけれど、何処へお納めしてよいのやら分りませんから、上人にお願い申そうために此れまで持って参りました、どうぞいかなる所へでもお納めなされて、お母さまが早く浄土へ行かれますように回向をなされて下さいましたら、ひとえに御利益に存じます、と、そう述べる言葉を黙って聞いていらしって、暫く上人は物も仰せられずに、限りなく御落涙なされるので、聴聞の人までが、遠くにいる者も近くにいる者も、一度に袖を濡らすのでした...
谷崎潤一郎 「三人法師」
...東京に行けばそのイヤな監視を遁れることが出来ると思って...
田山花袋 「トコヨゴヨミ」
...と言い遁れてきた...
豊島与志雄 「孤独者の愛」
...七兵衛は身をもって遁れるよりほかは...
中里介山 「大菩薩峠」
...その倦怠と不快な壓迫を遁れようとして盛に働いたみんなの惡戲性は...
南部修太郎 「猫又先生」
...遁れる事、思ひ切つて階段を駈け降りてしまふ事、それより外に自分の救ひ場がない氣がした...
南部修太郎 「ハルピンの一夜」
...のっぴきならぬ窮地から遁れようと思って...
橋本五郎 「殺人迷路」
...「貧しさ」(Penia)が己が苦境を遁れようとして「工面の善さ」(Poros)と野合を遂げて生んだ混血兒に外ならぬ(三)...
波多野精一 「時と永遠」
...「闇太郎、遁れぬぞ!」と、呼び立てる声は、ますます近寄って来た...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...一狼は遁れたが、今一つの狼は樹の幹に飛び上った...
南方熊楠 「十二支考」
...この苦しい居残りから遁れたいと思っていた...
室生犀星 「幼年時代」
...頭の上を押さえている屋根や搏風(はふ)の下を遁れたり...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...もう疾っくに平地を遁れた霊どもは...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...毒婦の手から遁れるところと思って岩蔭から身を起した時...
吉川英治 「剣難女難」
...宮門から遁れてきたが...
吉川英治 「三国志」
...「逃げ給え」「ともあれ一時ここを遁れて――」と...
吉川英治 「三国志」
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