...恰(あたか)も一度遁走(とんそう)せし兵士が...
芥川龍之介 「開化の殺人」
...手を振つて之を斥けるよりも先づ眼を背けて其醜より遁れむとする...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...一人の友達の、かつて、深山越(みやまごし)の峠の茶屋で、凄(すさま)じき迅雷(じんらい)猛雨に逢って、遁(に)げも、引きも、ほとんど詮術(せんすべ)のなさに、飲みかけていた硝子盃(コップ)を電力遮断の悲哀なる焦慮で、天窓(あたま)に被(かぶ)ったというのを、改めて思出すともなく、無意識か、はた、意識してか、知らず、しかくあらしめたものである...
泉鏡花 「薄紅梅」
...もう遁(に)げる道もなければ...
海野十三 「赤外線男」
...お父さまたちのお聞きにならないのを遁(に)げ出して来られて先の主人に投じられたので...
鈴木三重吉 「桑の実」
...ぬらりと身をかわす、くらりと遁れる...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...ペレニウスは巨船によって羅馬を遁(のが)れ去ったのでありますが...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...兄貴が誰だ/\といひながら裏戸へ出るとばた/\と五六人で遁げ出す足おとがした...
長塚節 「芋掘り」
...巡査(じゆんさ)でなくつたつて遁(に)げ出(だ)せば直(す)ぐ捉(つか)めえるやうに人(ひと)が番(ばん)してんのよ...
長塚節 「土」
...幾(いく)らか日(ひ)の明(あか)るさをも妨(さまた)げて居(ゐ)る其(そ)の濃霧(のうむ)から遁(のが)れようとするやうに間斷(かんだん)なく騷(さわ)いだ...
長塚節 「土」
...彼女が三人のごろつきの手から遁(に)げられるように...
葉山嘉樹 「淫賣婦」
...被害者が倒れると共にそのまま遁走するのが自然である...
松本泰 「P丘の殺人事件」
...1)Id. c. i. p. 172.かくて宗教的隠遁は頻々と行われ1)...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...ここまで遁げ延びて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...先を争って遁(のが)れ出て行く寺僧の群れも見たが...
吉川英治 「新書太閤記」
...範宴遁世(とんせい)のよしを叡山(えいざん)へ伝えあげてもらいたい...
吉川英治 「親鸞」
...あの時の難儀をどうにか遁(のが)れたと思うと...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...それをとり遁(に)がしたのではないか...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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