...はね起きて追いにかかると一目散に逃げたと思った女は...
有島武郎 「カインの末裔」
...「もうすぐ首だ」空気が逃げてゆくので...
海野十三 「恐竜島」
...四つの首は逃げ去った...
小泉八雲 田部隆次訳 「ろくろ首」
...きっと逃げているのだ……ああ...
ドイル Arthur Conan Doyle 岡本綺堂訳 「世界怪談名作集」
...建物にそつて逃げだしました...
豊島与志雄 「エミリアンの旅」
...逃げようたつて、子供のわたし一人ではどうにもなりません...
豊島与志雄 「スミトラ物語」
...逃げるようにして歩いています...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...そしてふたりはうまく逃げのびてきたものらしい...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...その上に荒っぽい船のやつらが網を張って逃げられねえようにしている...
中里介山 「大菩薩峠」
...バラバラと逃げ腰になつてしまひます...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...ああ面白くない、おもしろくない、あの人が来なければ幻燈をはじめるのも嫌、伯母さん此処(ここ)の家(うち)に智恵の板は売りませぬか、十六武蔵(むさし)でも何でもよい、手が暇で困ると美登利の淋しがれば、それよと即坐に鋏(はさみ)を借りて女子(おなご)づれは切抜きにかかる、男は三五郎を中に仁和賀のさらひ、北廓(ほくくわく)全盛見わたせば、軒は提燈(ちようちん)電気燈、いつも賑(にぎは)ふ五丁町、と諸声(もろごゑ)をかしくはやし立つるに、記憶(おぼえ)のよければ去年(こぞ)一昨年(おととし)とさかのぼりて、手振手拍子ひとつも変る事なし、うかれ立たる十人あまりの騒ぎなれば何事と門(かど)に立ちて人垣をつくりし中より、三五郎は居るか、一寸(ちよつと)来てくれ大急ぎだと、文次(ぶんじ)といふ元結(もとゆひ)よりの呼ぶに、何の用意もなくおいしよ、よし来たと身がるに敷居を飛こゆる時、この二タ股(また)野郎(やらう)覚悟をしろ、横町の面(つら)よごしめ唯(ただ)は置かぬ、誰れだと思ふ長吉だ生(なま)ふざけた真似をして後悔するなと頬骨(ほうぼね)一撃(うち)、あつと魂消(たまげ)て逃入る襟がみを、つかんで引出す横町の一むれ、それ三五郎をたたき殺せ、正太を引出してやつてしまへ、弱虫にげるな、団子屋の頓馬(とんま)も唯は置かぬと潮(うしほ)のやうに沸かへる騒ぎ、筆屋が軒の掛提燈は苦もなくたたき落されて、釣りらんぷ危なし店先の喧嘩なりませぬと女房が喚(わめ)きも聞かばこそ、人数(にんず)は大凡(おほよそ)十四五人、ねぢ鉢巻に大万燈ふりたてて、当るがままの乱暴狼藉(らうぜき)、土足に踏み込む傍若無人、目ざす敵(かたき)の正太が見えねば、何処へ隠くした、何処へ逃げた、さあ言はぬか、言はぬか、言はさずに置く物かと三五郎を取こめて撃つやら蹴(け)るやら、美登利くやしく止める人を掻(か)きのけて、これお前がたは三ちやんに何の咎(とが)がある、正太さんと喧嘩がしたくば正太さんとしたが宜い、逃げもせねば隠くしもしない、正太さんは居ぬでは無いか、此処は私が遊び処、お前がたに指でもささしはせぬ、ゑゑ憎くらしい長吉め、三ちやんを何故(なぜ)ぶつ、あれ又引たほした、意趣があらば私をお撃(ぶ)ち、相手には私がなる、伯母さん止めずに下されと身もだへして罵(ののし)れば、何を女郎め頬桁(ほうげた)たたく、姉の跡つぎの乞食め、手前(てめへ)の相手にはこれが相応だと多人数(おほく)のうしろより長吉、泥草履つかんで投つければ、ねらひ違(たが)はず美登利が額際にむさき物したたか、血相かへて立あがるを、怪我でもしてはと抱きとむる女房、ざまを見ろ、此方(こち)には龍華寺の藤本がついてゐるぞ、仕かへしには何時(いつ)でも来い、薄馬鹿野郎め、弱虫め、腰ぬけの活地(いくじ)なしめ、帰りには待伏せする、横町の闇(やみ)に気をつけろと三五郎を土間に投出せば、折から靴音たれやらが交番への注進今ぞしる、それと長吉声をかくれば丑松(うしまつ)文次その余(よ)の十余人、方角をかへてばらばらと逃足はやく、抜け裏の露路にかがむも有るべし、口惜しいくやしい口惜しい口惜しい、長吉め文次め丑松め、なぜ己れを殺さぬ、殺さぬか、己れも三五郎だ唯死ぬものか、幽(ゆうれい)になつても取殺すぞ、覚えてゐろ長吉めと湯玉のやうな涙はらはら、はては大声にわつと泣き出(いだ)す、身内や痛からん筒袖の処々引さかれて背中も腰も砂まぶれ、止めるにも止めかねて勢ひの悽(すさ)まじさに唯おどおどと気を呑(の)まれし、筆やの女房走り寄りて抱きおこし、背中(せな)をなで砂を払ひ、堪忍(かんにん)をし、堪忍をし、何と思つても先方(さき)は大勢、此方(こち)は皆よわい者ばかり、大人でさへ手が出しかねたに叶(かな)はぬは知れてゐる、それでも怪我のないは仕合(しあはせ)、この上は途中の待ぶせが危ない、幸ひの巡査(おまわり)さまに家まで見て頂かば我々も安心、この通りの子細で御座ります故(ゆゑ)と筋をあらあら折からの巡査に語れば、職掌がらいざ送らんと手を取らるるに、いゑいゑ送つて下さらずとも帰ります、一人で帰りますと小さく成るに、こりや怕(こわ)い事は無い、其方(そちら)の家(うち)まで送る分の事、心配するなと微笑を含んで頭(つむり)を撫(な)でらるるに弥々(いよいよ)ちぢみて、喧嘩をしたと言ふと親父(とつ)さんに叱かられます、頭(かしら)の家は大屋さんで御座りますからとて凋(しほ)れるをすかして、さらば門口(かどぐち)まで送つて遣(や)る、叱からるるやうの事は為(せ)ぬわとて連れらるるに四隣(あたり)の人胸を撫でてはるかに見送れば、何とかしけん横町の角にて巡査の手をば振はなして一目散に逃げぬ...
樋口一葉 「たけくらべ」
...再び夜逃げをするまで私は...
正岡容 「わが寄席青春録」
...おのが放(つ)け火の、すさまじい炎の渦に、押し捲かれそうになって、逃げに逃げて、やっと辿りついた崖の上、目の下は、鰐(わに)も棲みそうな血潮の流れで、それが、フツフツと沸きたぎっているから、追う火先きをのがれるために、それに飛び込むこともならぬ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...この間自分のにせものが大阪にあらわれて宿やでかっぱらいして逃げたのですって...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...逃げるなら逃げてみろ...
横光利一 「旅愁」
...逃げ口上(こうじょう)!」「だまれ...
吉川英治 「江戸三国志」
...逃げ水の記一もうこの屋敷へ預けられてから数日...
吉川英治 「宮本武蔵」
...そして、河へ飛び込もうとするのを、兵部の手が、鐺(こじり)を掴(つか)んで、「何で逃げる...
吉川英治 「無宿人国記」
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