...そいつを一緒に引取って頂き度(た)いので」家主の話を聞くと、このアトリエは元、ある彫刻家の持家であったのを、彼が買受けて貸家にしたので、岡田はその最初から二年ばかりの借り主であったが、非常に孤独な男で、奇妙なことには、身寄りのものも、親身の友達もないらしく、警察から水死の通知を受けても、死骸の引取手(ひきとりて)もなかったので、さしずめ家主が一切を引受けて、葬式から墓地のことまで心配した...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...それを孵(かえ)らせた親は、その身寄りは、天なるその父はどこにいるのだろうか? 空の居住人であるこの鳥は、いつか岩の割れ目において孵った卵によってのみ地とつながっているようである...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...一人の病める老婆身寄りもない...
知里真志保 「生きているコタンの銅像」
...わたしに代って敵を討つ身寄りがない限り...
中里介山 「大菩薩峠」
...幼少時代から身寄り頼りのない生来の漂泊者樹庵は...
西尾正 「放浪作家の冒険」
...裕福な上州屋のことですから、御得意に大名方も三軒五軒、手持ちの材木もうんとあり、遺族が困るの、店がどうのという事はなかったのですが、ともかく、うんとあるだろうと思われた現金がほんの当座の帳面尻を合せるだけ、二つの銭箱に少々ばかり入っていたのでは、身寄り一統、奉公人も世間の人も承知しません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...――お前の身寄りか知り合いがあるなら...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...本当は里親の身寄りで...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...旦那はこの者は身寄りのない者ゆえ...
正岡容 「我が圓朝研究」
...(お願いでごぜえます! お願えでごぜます! と叫んで追いすがり這い出して来そうな身寄りの者あり)ならぬ...
三好十郎 「天狗外伝 斬られの仙太」
...よい身寄りのない人は自身についた幸福だけで生きている間はよろしゅうございますが...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...栄二 お身寄りの方はないんですか...
森本薫 「女の一生」
...年取るにつれて身寄りのない孤独感が迫れば迫る程金に執着していく飯尾さんの気もちが紀久子には分らぬではなかったが...
矢田津世子 「父」
...だがおらあ親きょうだいも身寄りもねえ独りぼっちだ...
山本周五郎 「さぶ」
...勘十夫妻の身寄りの者でも来たら渡そうと...
山本周五郎 「柳橋物語」
...品行をよくしなければいけませんよ」叔母や叔父の身寄りから...
吉川英治 「三国志」
...身寄りの老幼に頒(わ)け与え...
吉川英治 「新・水滸伝」
...本位田家の一族――身寄りの誰や彼が十名近く...
吉川英治 「宮本武蔵」
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