...折り重なった鈍色(にぶいろ)の雲のかなたに夕日の影は跡形もなく消えうせて...
有島武郎 「或る女」
...そして瞬(またた)く中(うち)に跡形もなく永劫の中に溶け込んでしまって...
有島武郎 「惜みなく愛は奪う」
...清逸の心にある未練を残しつつその万花鏡(まんげきょう)のような花は跡形もなく消え失(う)せた...
有島武郎 「星座」
...しかしやがて二人の昂奮は大風に遭った霧のように跡形もなく消えてしまった...
海野十三 「十八時の音楽浴」
...そのまま跡形もなく舌の上にとろけゆく口触りのやはらかさ...
薄田泣菫 「独楽園」
...当分家へ来ることは遠慮してもらわなければならぬと咄嗟(とっさ)に決心していた胸の閊(つか)えが跡形もなく消え失せて...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...さきほどまでの癇癪(かんしゃく)は跡形もなく消え失せたのである...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...行きにあったボン(氷河の割目にかかった雪の橋)が跡形もなくなり...
久生十蘭 「白雪姫」
...跡形もなく癒(なほ)り始めた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...王女が跡形もなく消えたからだよ」「本当ですか...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「諜報部」
...お宅のお父さんに建てていただいた家は跡形もなく焼けてしまって...
三好十郎 「廃墟(一幕)」
...われわれの教えられている孝という思想は跡形もなく破壊せられてしまっています...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 森鴎外訳 「家常茶飯」
...それらを跡形もなく消滅させてしまったりするのと...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...それまでの彼の知識をただ一ぺんに跡形もなくしてしまった...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...古ければこそ滅びて跡形もなくなってしまうのである...
柳田国男 「故郷七十年」
...跡形もなく「朗らかさ」を毟(むし)り取って仕舞った...
蘭郁二郎 「夢鬼」
...血のしみは跡形もなくきれいに落ちてしまったのである...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
...跡形もなく消失することを喜んだのである...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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