...誰(だれ)か來(く)るのを待合(まちあ)はせて...
泉鏡太郎 「艶書」
...これは誰でもそう考えるだろう...
海野十三 「金属人間」
...子守唄をうたへば必ず何事を捨てゝも母の元へ飛んで行つて非常に落着いて膝を跪き靜かに念を入れてその頭を母の肩の邊に押し當てゝ顏を隱し嬉しき事あれば誰れにでも好んで接吻を求め或は兩手を祈るやうに組み合はして口のところへ置き持つてる物をとらうとする時奪ひとらうとすれば爭つて離さず手を合して頂戴をすればいそいで與へるこの本能的な動作は實にシンプルで貴い教へられ無いでする接吻や合掌である...
千家元麿 「自分は見た」
...それは誰でも、人から非難せられたり、怒られたりしていい気持がするものでは無いかも知れませんが、自分は怒っている人間の顔に、獅子(しし)よりも鰐(わに)よりも竜よりも、もっとおそろしい動物の本性を見るのです...
太宰治 「人間失格」
...誰も他人の云うことなんぞに耳を傾ける者はなかった...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...誰やら男が一人歩み寄って来た...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「犬を連れた奥さん」
...誰もその奥をつきとめた者がない...
知里真志保 「あの世の入口」
...誰もこの新らしい恋愛結婚に賛成するものはなかった...
徳田秋声 「仮装人物」
...また誰かが風のようについて来る...
豊島与志雄 「都会の幽気」
...四兄はその年ごろの者が誰しも一度はもつことのある自己拡張の臭味をしたたかに帯びた好奇的親切……から生れつき自分とはまつたくちがつた風に形づくられて西と東に別れゆくべき人間であつた私をまことに行きとどいた厳しい教育の力によつて否応なしに自分のはうへ捩ぢむけようと骨を折つた...
中勘助 「銀の匙」
...三百円のダイヤなどは誰も振向いても見ないが...
中里介山 「大菩薩峠」
...「額の男」を書いたのでない事丈は誰の目にも明らかである...
夏目漱石 「「額の男」を讀む」
...西洋の詩では句法が散文に比し大に違つてゐて誰も怪しまないのは...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...車などのはいって来られそうもないところだのに誰がそんなところに自動車を乗り入れたのだろう...
堀辰雄 「菜穂子」
...そうして誰一人醜い世から起るこの不幸について...
柳宗悦 「工藝の道」
...(――敵も槍ぶすま、味方も槍ぶすま、にじり足に詰(つめ)あひ候ふて、たがひに声ばかり数十度も交し、やがては、押太鼓も耳には聞えず、わが声も人のもわかたず、眼くらみ、槍もつ手は硬(こは)ばり、身心地も候はず、一瞬、天地も真つ暗に覚えられ候ふ時、はや敵の顔も、そこにありあり見え申しながら、なほ敵の列よりも一歩も出る者なく、味方の列も槍の穂ばかりそろへ候ふて一足も駆け出る者はなく、こゝは千仭(せんじん)の谷間か、虚空かとばかり、足もすくみ、心神くらめき候ふとき、誰ともわかず、何の某(なにがし)と名のりざま、一番にをどり出てむらがる敵の中へ、体当りに突き入る者こそあれと覚ゆる一刹那より、初めて、われも忘るゝこゝちと共に、その勇者に励まされて、敵の中へ続いて駆け入るにて候ふなり...
吉川英治 「上杉謙信」
...――彼が言ったこよいの同伴者とは誰なのか...
吉川英治 「私本太平記」
...「きまったか」およそはこうと予期されていたことではあったが、決定と分ると、誰の眉にも、一層な明るさと、前途への意気が盈(み)ちて見えた...
吉川英治 「新書太閤記」
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