...物の陰を縫うてその恋人を用意の位置に誘うた...
伊藤左千夫 「春の潮」
...今日も酒なしか、――などと考へてゐるところへ、Kさん来訪、まだ酒があるから、樹明君を誘うて、もう一度(二度でも三度でも)忘年会を開かうといふ、大賛成で待ち受けてゐると、暮れないうちに、樹明君は魚の包を、Kさんは罎詰を持つて来庵、それからおもしろおかしく飲んで解散した、めでたやめでたや、善哉々々! 年も忘れたが、自分を忘れた、うれしいね、愉快だね...
種田山頭火 「其中日記」
...さびしい花瓶(かびん)の菜の花もそのたびに淡いあわれの情趣を誘うた...
寺田寅彦 「病室の花」
...葉子は庸三にも来るようにと誘うので...
徳田秋声 「仮装人物」
...腹を立てるより、腹の中にトンカツでもつめこんだ方がよかろうと、留七へ誘うと、その皮肉には全く無反応で、まだ南京豆の一件を怒りながら、巨大なトンカツを二つも食べてしまった...
豊島与志雄 「蛸の如きもの」
...自分は米友を誘うて人気者の行列を突切りました...
中里介山 「大菩薩峠」
...己(おのれ)に二十倍する大軍をも怯(おそ)れず日に日に南下して我を誘うかに見えるのは...
中島敦 「李陵」
...歌はしばし絶えて弓擦る音の風誘う遠きより高く低く...
夏目漱石 「幻影の盾」
...親分」ガラッ八が誘うまま...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...身震いを誘う鬼気が感じられる...
細井吉造 「二つの松川」
...妻がいつも誘う社交界は苦手だった...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「くちなしの花」
...と言うより哀れを誘う物体だった...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「謎の四つ指」
...そしたらその憤慨の情は収まるであらう――などと私を誘うた...
牧野信一 「彼に就いての挿話」
...小鍋立(こなべた)ての風(ふう)を誘うに至った...
柳田国男 「木綿以前の事」
...人の同情を誘ういたましいものはない...
横光利一 「夜の靴」
...彼女のにおいと襟あしが誘うものに...
吉川英治 「脚」
...悪いようにはしないから」親切そうに誘うので...
吉川英治 「江戸三国志」
...鉄錠(てつじょう)の音が、不気味を誘う...
吉川英治 「新・水滸伝」
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