...道ゆく人々がみんな行きずりに...
種田山頭火 「行乞記」
...七十八「あなた様のお父様には、わっしゃ、美濃の関ヶ原でお初にお目にかかりました、一昨日(おととい)のあけ方のことでございます」「関ヶ原で?」「はい――実あ、その、なんでげして、これが甲州第一の物持でいらっしゃる有野村の伊太夫様だなんていうことは、夢にも存じやせんで、お目にかかっちまったんですが、ようやく昨日の晩になって、はじめてそれと伺いまして、驚きましてな」「そうして、今はどこにいらっしゃる」「関ヶ原から、昨晩は大津泊りでいらっしゃいました」「大津――」「はい、大津の宿で、はじめてそれと伺いまして、なるほど、がんりきの目は高いと、こう味噌をあげちゃいましたようなわけなんでございましてな」「何のために、お前さんは、わたしの父親に逢ったのですか」「何のためにとおっしゃられると、ちと変なんでげしてな、行当りばったりに、袖摺(そです)り御縁というやつで、つい、関ヶ原の夕方お見かけ申しちまったんですが、今も申し上げる通り、これが甲州第一の物持の旦那様と知ってお見かけ申しちゃいましたわけじゃあござりませぬ、ただ行きずりに、こいつは只者でねえと睨(にら)んだこの眼力にあやまちがなく、お跡を慕ってみますてえと、果して大ものでござりましてな」「では、お前は、わたしのお父様の旅をなさるあとをつけて、何か奪い取ろうとしたのですね」「いや、その、ちょっとね、ちょっと行きがかりに、今いう、その、路用てやつを少々おねだり申したいと、こう思いましたばっかりなんでげすが、それが、その、みんごとしくじって、瓦っかけを抱かされちまったのが一代の失敗(しくじり)、これじゃ商売冥利(みょうり)に尽きるといったようなわけで、再挙を試みたが、さいぜん申し上げる通りの用心堅固、大津まであとをつけて、やっとの思いでこの一腰(ひとこし)を拝領に及びました、そこで様子を窺(うかが)って見るてえと、この大物の身上がすっかりわかりました...
中里介山 「大菩薩峠」
...行きずりの小草の中に...
萩原朔太郎 「絶句四章」
...あれは旅の行きずりの...
林芙美子 「浮雲」
...ふと行きずりにこうして並(なら)んでみると...
林芙美子 「魚の序文」
...何とない行きずりの語らひを愉しむ...
林芙美子 「摩周湖紀行」
...行きずりの口論から抜きあわせたのだが...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...行きずりに垣根越しにあなたの家のなかへ投げこんだ...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...幌馬車の馭者台に乗った行きずりの商人も飛びすぎて行く...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...重大犯罪をもくろむ行きずりのごろつきか...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「王冠の重み」
...買われました」「でも行きずりの老紳士に...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「鉄面皮」
...行きずりの女の人に眼を惹かれる美しさによく似ている故をもって...
室生犀星 「陶古の女人」
...行きずりの人も怪しまぬ...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...行きずりの旅人の足をも相応に集めております...
吉川英治 「江戸三国志」
...行きずりの人の如く装って...
吉川英治 「新書太閤記」
...ちょっと行きずりの会釈を交わした二人がいます...
吉川英治 「新・水滸伝」
...武者修行同士が行きずりに持つ...
吉川英治 「宮本武蔵」
...いわば行きずりの人の温かさに過ぎない事ではあったけれど...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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