...耳は扇とかざしたり、鼻は象牙に介(はさ)みたり、半眼(はんがん)にして辿(たど)りゆくその胴腹(どうばら)の波だちに、息のほてりや、汗のほけ、烟となつて散亂(さんらん)し、幾千萬の昆蟲が、うなりて集(つど)ふ餌食(ゑじき)かな...
上田敏 上田敏訳 「海潮音」
...斯く思ひ來れば、重景の何となう疎(うと)ましくなるに引き換へて、瀧口を憐れむの情愈切(せつ)にして、世を捨て給ひしも我れ故と思ふ心の身にひし/\と當りて、立ちても坐りても居堪(ゐたゝま)らず、窓打つ落葉のひゞきも、蟲の音(ね)も、我を咎むる心地して、繰擴(くりひろ)げし文(ふみ)の文字(もじ)は、宛然(さながら)我れを睨むが如く見ゆるに、目を閉ぢ耳を塞(ふさ)ぎて机の側らに伏し轉(まろ)べば、『あたら武士を汝故(そなたゆゑ)に』と、いづこともなく囁(さゝや)く聲、心の耳に聞えて、胸は刃に割(さ)かるゝ思ひ...
高山樗牛 「瀧口入道」
...私は風景をスケツチしたり昆蟲の採集をしたりして...
太宰治 「思ひ出」
...松蟲や鈴蟲なら、此處にも澤山をりますほどに、あとでいくらでも取つてさし上げてもよろしうございます……』かうした山の中の庵室にまでも、かの女と道綱とが、東三條殿で名高くなつてゐるといふことは、一面不思議な心持を窕子に誘つた...
田山花袋 「道綱の母」
...方物志の代りに昆蟲草木略がある...
内藤湖南 「支那史學史概要」
...白い毛の生えた大きな毛蟲が葉をくつて枝の先にくつゝいて居る...
長塚節 「芋掘り」
...小屋へ腰を掛けて居ると鶺鴒(せきれい)が時々蟲を銜(くは)へて足もとまで來ては尾を搖しながらついと飛んで行く...
長塚節 「炭燒のむすめ」
...私達は蟲酸(むしづ)の走るやうな輕薄さを感じた...
南部修太郎 「猫又先生」
...お勝手の方へ蟲のやうに這つて居るのは...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...蟲のやうに殺されるとも知らずに見上げて思はずにつこりしたことだらう」「さう聽くと可哀想でもありますね」「お前だつてそんな氣になるだらう...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...恐ろしい下手人はあの蟲も殺さぬ顔をしているお栄だよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...どこにこんな荒寥の地方があるのだらう!年をとつた乞食の群はいくたりとなく隊列のあとをすぎさつてゆき禿鷹の屍肉にむらがるやうにきたない小蟲が燒地(やけち)の穢土(ゑど)にむらがつてゐる...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...穴(あな)を掘(ほ)つて蟲(むし)をとつたり...
濱田青陵 「博物館」
...有害な蟲類や動物までも除外しない...
エム・ケー・ガンヂー 福永渙訳 「非暴力」
...行くがいい 既に門出の時である 行け太陽のもと 喧噪のさなかに 行け 風塵霜露の衢々に行つて お前の運命を試みるべき時である 行け片意地な兜蟲 か弱い仔雀 跛この驢馬 憐れなるわが詩(うた)の一卷...
三好達治 「山果集に寄す」
...しかも淺草のまんなかで今頃蟲のこゑでもあるまいと思ひながら...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...半面蟲をおそれぬ性を持つことを發見した...
横瀬夜雨 「五葉の松」
...羽蟲の群がひくゝ水の上にまひ...
若山牧水 「樹木とその葉」
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