...焦茶のインバネスが薄鼠の中折を被ツて立ツて居る様に見える...
石川啄木 「漂泊」
...根雪に残るのじゃあございません、ほんの前触れで、一きよめ白くしましたので、ぼっとほの白く、薄鼠に、梟の頂が暗夜(やみ)に浮いて見えました...
泉鏡花 「唄立山心中一曲」
...その檜葉(ひば)の立木に包まれた薄鼠塗りの洋館の建物の二階が横向きに見えるのを見上げながら義男は「何も要らないからせめて理想の家だけは建てたい...
田村俊子 「木乃伊の口紅」
...薄鼠色(うすねずみいろ)の着物の長くひいた裾(すそ)にはやはり月見草が美しく染め出されていた...
寺田寅彦 「花物語」
...薄鼠色の地に水色の井桁を散らした薄物をきりっとまとい...
豊島与志雄 「白蛾」
...薄鼠色の地が、血のために真黒になっていました...
トルストイ 米川正夫訳 「クロイツェル・ソナタ」
...かゝる夕方に空を仰ぐと冬には決して見られない薄鼠色の鱗雲が名残の夕日に染められたまゝ動かず空一面に浮いてゐて...
永井荷風 「花より雨に」
...そして薄鼠色になった石鹸水の表面にあかが浮いている中から...
中谷宇吉郎 「温泉2」
...遠くの山も人家も薄鼠色に消えて行くのを背景に...
中谷宇吉郎 「粉雪」
...浅草馬道の、松村という貸衣裳屋の保証金の受取証で、(金二十円他、薄鼠、クレープドシン、アフタヌン一着、保証金)と書いてあり、その裏に血痕と思われる拇指頭大の丸い褐色の汚点がついていた...
久生十蘭 「金狼」
...薄鼠のダブルのスーツかなにか着て...
久生十蘭 「蝶の絵」
...薄鼠の羅紗のあっさりした仕立の上着とであった...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「道化者」
...薄鼠の夏服に、ひどく尖った黄靴、淡紅(とき)色のワイシャツに、はでな絹のネクタイ、それからまるい、つばの狭い麦藁帽子をあみだにかぶっている...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「なぐり合い」
...八つ頃から空は次第に薄鼠色(うすねずみいろ)になつて来て...
森鴎外 「大塩平八郎」
...薄鼠色の洋服に鼻眼鏡に似た眼鏡のせいもあって...
横光利一 「旅愁」
...薄鼠色の船体を並べた外国船...
横光利一 「旅愁」
...そのコスチュームはノラの薄鼠色の皮膚だ...
吉行エイスケ 「新種族ノラ」
...ノラは一階のマーケットで彼女のエロチシズムと薄鼠色の蠱惑(こわく)で商品を粉飾した...
吉行エイスケ 「新種族ノラ」
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