...薄黒い水の中に、何か白いものがうごめいていた...
江戸川乱歩 「黒蜥蜴」
...薄黒い暈(くま)で縁取られてる眼が異様に輝いていた...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...厚い唇をして額に薄黒い曇りがあった...
豊島与志雄 「未来の天才」
...果して薄黒いものが股について来た...
夏目漱石 「虞美人草」
...ことに霜に打たれて蒼味(あおみ)を失った杉の木立(こだち)の茶褐色(ちゃかっしょく)が、薄黒い空の中に、梢(こずえ)を並べて聳(そび)えているのを振り返って見た時は、寒さが背中へ噛(かじ)り付いたような心持がしました...
夏目漱石 「こころ」
...影の半分は薄黒い...
夏目漱石 「三四郎」
...大きな落ち込んだ彼女の眼の下を薄黒い半円形の暈(かさ)が...
夏目漱石 「道草」
...何だか日当りの善い山の上から薄黒い洞窟(どうくつ)の中へ入(はい)り込んだような心持ちがする...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...あの薄黒い丸藥の法書が?」「それにしても不愍(ふびん)な人間だ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...薄黒い顏でふり仰ぎました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...百七十尺の高い煙突が聳えて薄黒い煙をはいている...
火野葦平 「糞尿譚」
...大変薄黒いやうな色をしてゐるのである...
北條民雄 「癩を病む青年達」
...四つ這いになった彼の長い身体、白い靴下の穴からのぞく、薄黒い足の裏、血に染って赤くなった大きい門歯、苦痛の涙に濡れた長い睫毛(まつげ)――それら全体は、より所もない孤独の感じで、細かく波打っている如くであった...
松永延造 「ラ氏の笛」
...遠野! 遠野もやはり薄黒い...
水野葉舟 「遠野へ」
...更けても暗くはならない、此頃(このごろ)の六月の夜(よ)の薄明りの、褪(さ)めたような色の光線にも、また翌日の朝焼けまで微(かす)かに光り止(や)まない、空想的な、不思議に優しい調子の、薄色の夕日の景色にも、また暴風(あらし)の来そうな、薄黒い空の下で、銀鼠色(ぎんねずみいろ)に光っている海にも、また海岸に棲んでいる人民の異様な目にも、どの中にも一種の秘密がある...
ハンス・ランド Hans Land 森鴎外訳 「冬の王」
...そのうちに薄黒いダンダラを作った花壇の向う側の暗黒を...
夢野久作 「白菊」
...彼は薄黒い男共が...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...薄黒い室の片隅にパッと火花が散る...
モウリス・ルブラン 新青年編輯局訳 「水晶の栓」
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