...見る見る薄暗さを加へて行つた...
芥川龍之介 「お富の貞操」
...玩具屋の店の中は――殊にこの玩具の空箱(あきばこ)などを無造作(むぞうさ)に積み上げた店の隅は日の暮の薄暗さと変りはない...
芥川龍之介 「少年」
...廊下には夜明けからの薄暗さがそのまま残っていた...
有島武郎 「或る女」
...薄暗さがあちこちの隅にたまり始めている...
梅崎春生 「幻化」
...時雨(しぐ)らんだような薄暗さのなかに...
徳田秋声 「仮装人物」
...混雑と騒ぎと人込みと薄暗さとまただれも自分に注意を向けていない瞬間とに乗じて...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...滅入るような、薄暗さと、静けさとの中で、綱手は、鏡無しでつけた白粉の、のり、紅の濃淡、髪の形を気にしながら、百城の前で、じっと、俯向いて黙っていた...
直木三十五 「南国太平記」
...外から這入(はい)ると人の顔さえちょっとは見分かぬほどの薄暗さ...
永井荷風 「妾宅」
...半分から先は夕飯に呼ばれたのと夜になりかけた窓の薄暗さに拾い読みをしたばかりなので...
永井荷風 「つゆのあとさき」
...その薄暗さは階下(した)よりもまた一層甚しいように思われた...
永井荷風 「ひかげの花」
...幹をすかして空の見える反対の方角を見ると――西か東か無論わからぬ――爰(ここ)ばかりは木が重なり合(おう)て一畝(ひとせ)程は際立(きわだ)つ薄暗さを地に印する中に池がある...
夏目漱石 「幻影の盾」
...折からの窓の西日影を薄茶色のカアテンで遮つた室内の薄暗さが...
南部修太郎 「疑惑」
...新聞さへ読めない程の薄暗さである...
平林初之輔 「鉄の規律」
...心のうちの邪しまな薄暗さは比ぶべくもなく...
牧野信一 「天狗洞食客記」
...薄暗さの中にかすかに見える...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...徐々(そろそろ)陰って来た日影は茂った大柄な葉に遮られて涼しい薄暗さを四辺(あたり)一杯に漂わせて...
宮本百合子 「お久美さんと其の周囲」
...場内はたまらない薄暗さと...
夢野久作 「二重心臓」
...変りない薄暗さの中に沈淪(ちんりん)していた...
蘭郁二郎 「白金神経の少女」
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