...玩具屋の店の中は――殊にこの玩具の空箱(あきばこ)などを無造作(むぞうさ)に積み上げた店の隅は日の暮の薄暗さと変りはない...
芥川龍之介 「少年」
...森はしだいに濃くなり人家はまばらになつてきた……あたりの景色には宿屋やその他の建物がだんだんとぼしくなつてくるようであつた……日光が昼日中だというのに荒れ模様の薄暗さになりかけた……濃い紫色の雲が濃い灰色の森の上にむらがつてきた...
G・K・チェスタートン G. K. Chesterton 村崎敏郎訳 「とけない問題」
...馬車の黴臭い内部は、その湿(しめ)っぽい汚(よご)れた藁と、不愉快な臭気と、薄暗さとで、幾らか、大きな犬小屋のようであった...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...そこの薄暗さでは見透すのが困難であったので...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...時雨(しぐ)らんだような薄暗さのなかに...
徳田秋声 「仮装人物」
...黄昏(たそがれ)に似た薄暗さの底に...
徳田秋声 「仮装人物」
...外から這入(はい)ると人の顔さえちょっとは見分かぬほどの薄暗さ...
永井荷風 「妾宅」
...しかして彼らはこの寒さと薄暗さにも恨むことなく反抗することなく...
永井荷風 「妾宅」
...電燈の薄暗さ...
永井荷風 「西瓜」
...その薄暗さは階下(した)よりもまた一層甚しいように思われた...
永井荷風 「ひかげの花」
...今と同じような薄暗さ...
中島敦 「木乃伊」
...幹をすかして空の見える反対の方角を見ると――西か東か無論わからぬ――爰(ここ)ばかりは木が重なり合(おう)て一畝(ひとせ)程は際立(きわだ)つ薄暗さを地に印する中に池がある...
夏目漱石 「幻影の盾」
...眞夜中過ぎの劇しい寒さにこごえたやうな電燈の光の薄暗さ...
南部修太郎 「ハルピンの一夜」
...廊下の薄暗さを幸(しあわせ)にして...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...薄暗さの中にかすかに見える...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...徐々(そろそろ)陰って来た日影は茂った大柄な葉に遮られて涼しい薄暗さを四辺(あたり)一杯に漂わせて...
宮本百合子 「お久美さんと其の周囲」
...かういふ巣窟にありがちな家々の藍ばんだ何だか埃つぽい薄暗さは...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...変りない薄暗さの中に沈淪(ちんりん)していた...
蘭郁二郎 「白金神経の少女」
便利!手書き漢字入力検索