...いつかの小鳥の心臓! 私は子供の死体を溝に投げ込んでそれを草で蔽うた...
ギィ・ドゥ・モオパッサン Guy de Maupassant 秋田滋訳 「狂人日記」
...蔽うべからざる事実である...
石原純 「社会事情と科学的精神」
...人間の生死を通じて今や蔽うことのできない証拠となってきたことを...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...なお青春のかがやかしさはその暗さを蔽うてしまう...
大島亮吉 「涸沢の岩小屋のある夜のこと」
...ドレスは脚を蔽うにたりるだけの長さもなかった...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...肥後国山鹿郡荒爪の山を蔽うと...
高木敏雄 「比較神話学」
...その人家の群つてゐる處にぽつりぽつり明星のごとき燈火が山を蔽うた夜霧を透して瞬きはじめる...
近松秋江 「湖光島影」
...恐らくより文学的に優れた表現を用いようと努力したことから生じるものだろうが(論旨の弱小・貧困を蔽うためであるかどうかは論外として)...
戸坂潤 「思想としての文学」
...私は横向きに枕を抱くようにして、両袖で顔を蔽う...
豊島与志雄 「聖女人像」
...空の半面を黒雲が蔽うこともあった...
豊島与志雄 「山吹の花」
...昼なお暗く天を蔽うた老樹の根方(ねがた)と...
永井荷風 「日和下駄」
...その邊も大通は車がヘッド・ライトを蔽うて織るやうに疾驅してゐた...
野上豐一郎 「大戰脱出記」
...二人の目がそそがれるあたりに立った人影は、年のころ、五十あまり、鬢髪(びんぱつ)はそそげ、肩先は削(そ)げおとろえ、指先が鉤(かぎ)のように曲った、亡霊にも似た男――「おのれ! 三郎兵衛、ようも、子飼いの恩を忘れ、土部奉行や、浜川、横山、これなる広海屋と腹を合せ、わが松浦屋を亡ぼしたな――ようもようも、むつきの上から拾い上げ、手塩にかけて育てたわしの恩を忘れ、編笠一蓋(あみがさいちがい)、累代(るいだい)の家から追い出したな! おのれ、そのうらみを、やわか、やわか、忘れようか!」と、一足、すすめば、「うわあ! おゆるし下され、おゆるし下され、わたくしがわるうござりました」と、長崎屋は、広海屋にすがりつきながら、手を蔽う...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...それを蔽うて、襲って来た飛行機の爆音...
三好十郎 「その人を知らず」
...それを蔽うてあふれるものもある...
室生犀星 「舌を噛み切った女」
...黒煙は天を蔽うて凄い...
山本笑月 「明治世相百話」
...大空を蔽うて立つ数個の大ビルディング...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...自己の罪を蔽うために...
吉川英治 「三国志」
便利!手書き漢字入力検索