...我々は何よりも真先きに空気のお蔭で生きてゐるので...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...その外(ほか)箪笥の蔭にも...
江戸川乱歩 「恐怖王」
...その蔭に隠れてにや/\笑つてゐる大村西崖(せいがい)が...
薄田泣菫 「茶話」
...5.吾々が今尚そのお蔭を蒙つてゐる最古の文化國埃及は三千年或ひはそれよりもつと前に劇的演技に見物人を送つた...
關口存男 「新獨逸語文法教程解説」
...思へば父が庇蔭目(ひいきめ)の過(あやま)ちなりし...
高山樗牛 「瀧口入道」
...そいつに対する彼女の蔭の嘲罵(ちょうば)は...
太宰治 「男女同権」
...浅く雪に蔽(おお)われた日蔭の屋根であった...
富ノ沢麟太郎 「あめんちあ」
...繰込んできた同勢は手を取り組んで、ここの木蔭や、かしこの築山(つきやま)の蔭で散々(さんざん)に踊ります...
中里介山 「大菩薩峠」
...七兵衛は、そんな事を考えている時、下では、呉竹の間や、稲垣の蔭や、藤棚の下や、不動堂の裏あたりから、黒い人影が幾つも、のこのこと出て来ては、松の幹の下の、以前に話し込んでいた二人の前に集まると、二人の者がいちいちそれに囁(ささや)いて差図をするらしい...
中里介山 「大菩薩峠」
...その辺で、また道庵先生が一転して、堕胎や間(ま)びきの悪い風儀を罵(ののし)りながら、その口の下から、徳川幕府がこうして三百年も日本の国を鎖(とざ)していながら、人間がこの国に溢(あふ)れ返りもせず、人口過剰のために、乱民が出来たり、食糧不足が生じたりすることが、部分部分には多少なかったとは言えないけれども、大体に於ては、無事に三百年を経過して来たというものは、蔭にこの堕胎や、間びくことの不言実行が行われていて、そうして、おのずから人口調節になったのだという人の説と、これもまた一理あって、人間は鼠をつかまえて、鼠算だのなんのと愚弄(ぐろう)嘲笑するけれども、人間それ自身の殖え方が鼠には負けないこと、殖えるままに殖やし、生れるままに産ませて置けば、三百年どころではない、三十年、五十年で、二倍にも三倍にもなって、忽(たちま)ちこの島国は人間で蒸れ返ってしまう――そこで徳川三百年の間、たいして人口に増減がなく調節されて来たのは、この闇から闇の不言実行が、到るところに行われていた結果だという説と、それから、今まではそれでよかったが、これから開国ということになってみると、日本人も、どしどし外国へ行かなけりゃあならないのだから、人間をうんと産み殖やせということになるだろう、そうなると、これからの時勢は、右の不言実行の法度(はっと)が厳しくなる!というようなことまで、発展だか、脱線だか知らないけれども、道庵がお雪ちゃんのために語って聞かせました...
中里介山 「大菩薩峠」
...御蔭様で生涯没頭して悔(くい)ない面白い仕事にありつきましたと言おうかと思っているうちに...
中谷宇吉郎 「寺田先生の追憶」
...戸袋の蔭を念入りに調べましたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...八五郎は待ち構へたやうに物蔭へ引つ張つて行つて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...高い建築物の日蔭を泳ぎ廻る群衆の一滴で彼はあった...
原民喜 「玩具」
...ぺしやんこになつた建物の蔭からふと...
原民喜 「夏の花」
...在留邦人のうるさい蔭口を...
三浦環 「お蝶夫人」
...そいつが自分は蔭に隠れて...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...立派な犬が人々の蔭にいたのだ...
吉川英治 「私本太平記」
便利!手書き漢字入力検索