...茫然と庭の跡を眺めまはした...
芥川龍之介 「六の宮の姫君」
...私はあまりの驚きですっかり茫然としてしまって...
スティーヴンスン Stevenson Robert Louis 佐々木直次郎訳 「ジーキル博士とハイド氏の怪事件」
...我等が神飢ゑ気疲れてテーブルの前に茫然としてゐる時に...
高浜虚子 「発行所の庭木」
...陳はその故が解らないので茫然としていた...
田中貢太郎 「西湖主」
...木の根に腰をかけながら茫然としていたが...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...私は自ら茫然としているうちに...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...シャクが弟の屍体の傍に茫然と立っていた時...
中島敦 「狐憑」
...あの沼沢地のほとりで茫然としていたか...
西尾正 「墓場」
......
野口雨情 「都会と田園」
...恐ろしく茫然としたまま...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「鼻」
...「おしのさん、どうするんです」彼は歩きながら、茫然と呟いた、「貴女はどこへいったんです、これからどうしようというんですか、いったいなにをするつもりなんですか、おしのさん」二「貴女と初めて逢ったのは正月の二十日ですよ、覚えていますかおりうさん」「覚えていますとも」おりうと呼ばれた女は、男をながし眼に見ながら、舌がだるいとでもいうような、あまえた口ぶりで云った、「――だってあたしのほうで呼んだんですもの、そうでしょ」「それから五月まで月に一度か二度、夏のうちは音沙汰なしで今月はもう十月、もうすぐ一年になるんですよ」「また年を一つとるのね、いやだこと」「おりうさん」「飲んでちょうだい」と女は云った、「月なんか数えるから年のことを思いだしちゃったじゃないの、いやなお師匠さん」「ふしぎだ」と男が云った、「その声のまわしようと、左の肩をおとして躯をかしげるしなは、そっくり沢田屋の得意の型だ」「またあんなことを」「そらその眼つき、――お嬢さん、貴女はきっと沢田屋とわけがおありですね」男は盃(さかずき)を置いて云った、「いいや、ただのひいきじゃあない、舞台を見ているだけで、あの東蔵の声まわしや身振りが、そんなにぴったり写るものじゃあない、私も岸沢蝶太夫(ちょうだゆう)です、そのくらいのことは見当がつきますよ」「そんなふうにからむんなら、あたし帰るわ」「図星というわけですか」「いいこと」女は坐り直した、自分では無意識かもしれないが、坐り直すと却(かえ)って、躯の線のやわらかさと、嬌(なまめ)かしさとが際立つようにみえた、「いいこと、お師匠さん」と女はあまえた口ぶりで云った、「あたしは芝居は好きだし、見ることはむろん見るわ、沢田屋の舞台だって見ているけれど、役者衆とは誰に限らず、これまでいちども逢ったことなんかありゃあしなくってよ」「それはお師匠さんとこんなふうに逢っているんだから」と女は続けた、「どんな浮気者と云われてもしかたがないでしょう、でもお師匠さんにそんな女だと思われるなんて辛いことよ」「それが本当なら」と男が云った、「どうしていつまでこんなふうに、蛇のなま殺しのようなめにあわせるんですか」「お師匠さんにはあたしの気持がわからないのね」「おりうさん」と男は手を伸ばした...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...昌平は雨の中をただ茫然と歩いていた...
山本周五郎 「七日七夜」
...茫然となっているばかりであった...
夢野久作 「斜坑」
...その愕(おどろ)きが、いかに大きく、彼の心をうったかは、とたんに手脚を張って、茫然と、空の雲へ向けていた放心的な眼にも明らかであった...
吉川英治 「三国志」
...そのあと……ほっと大息を肩でついたまま、みなしばらくは、茫然と、各が各のいるところに立っていた...
吉川英治 「梅里先生行状記」
...茫然としている息子の後ろから...
吉川英治 「宮本武蔵」
...茫然としている小幡の門人達の前へ投げつけて...
吉川英治 「宮本武蔵」
...兩手で(あご)を支へて茫然と光る瀬の水を凝視して居る...
若山牧水 「古い村」
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