...彼等の議論はクリストを茫然とさせずには措(お)かなかつたであらう...
芥川龍之介 「西方の人」
...茫然として妻に近づきました...
芥川龍之介 「二つの手紙」
...その変幻きわまりない不思議な美しさは私を茫然とさせてしまつた...
伊丹万作 「私の活動写真傍観史」
...茫然として夫人の屍体に見入ったまま...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...そしてはじめは、茫然として、一同欄干に縋(すが)り付いたまま、声一つ出すものもなく、あまりにも打って変った平和な景色に、見惚れ切っていたのであったが、やがて自分らの眺めているこの景色が、決して消えて儚(はかな)くなるような、そんな幻覚でもなければ、あるいはまた、死後の世界でもないということがハッキリと飲み込めると……そして今言ったように、大渦巻の起す遠心力のお陰で、見事にウニデス潮流の外へ押し出されて、そのまま北西風に送られて、こんな穏やかな港へ流されたのだと分った時には、一同喚声をあげて、躍り上り、躍り上り、声を限りに万歳を絶叫したのであった...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...ただ茫然として今眼の前に開けた大景観に眼を奪われ切っているのであった...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...こうした無限定の前に茫然と立ちつくすような真似をしないためには...
戸坂潤 「思想としての文学」
...何だか満ち足りない焦燥のうちに茫然としてる時……と云っても...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...竹山は茫然と坐りこんでいた...
豊島与志雄 「椎の木」
...茫然と見惚(みと)れていた...
中島敦 「環礁」
...茫然とその絵を眺めていた...
久生十蘭 「キャラコさん」
...親分の切断された左手を茫然と見つめた...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「謎の四つ指」
...合爾合(カルカ)は茫然と円柱のかげに立ったまま沈思する...
林不忘 「若き日の成吉思汗」
...男は暫時(しばし)茫然としていたが...
柳川春葉 「一つ枕」
...「――夢のようだ」孝之助は殆んど茫然と云った...
山本周五郎 「竹柏記」
...うしろの木蔭まで尾けて来た日本左衛門をして茫然とさせました...
吉川英治 「江戸三国志」
...茫然と変りはてた能登ノ介が...
吉川英治 「私本太平記」
...年は十九にもなっていたのだけれど、一こうなおまだ“あんにゃもんにゃ時代”の殻を脱け切れていないうち、この奇禍に遭(あ)って、茫然と、薬びたしのわが身を、白いベッドの中に見出していたというのが偽らないぼくの気もちやら姿であった...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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