...なかなか苦労が多いの...
太宰治 「嘘」
...左肩をそびやかすようにした平馬――歩み過ぎた時、連れを先に立てるようにして、「親爺、――先っきの太鼓は、何の固めだ?」「へい――」と、辻番は、提灯を下ろして、「あれでございますか? 江戸を名打ての大泥棒が、大川屋さんの、塀際にいたとかいうことで、いやもうこの界隈(かいわい)、やかましいことでござりました」水ッ涕(ぱな)を啜(すす)りながら、闇太郎の後姿に、眼が触れたか触れぬか、「とかくこの頃は、物騒な市中の形勢――お互に、苦労が多いな...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
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