...さては寺道を山や田に往返(ゆきかへ)りの男女の暢気(のんき)な濁声(だみごゑ)が手にとる様に聞える――智恵子は其聞苦しい訛にも耳慣れた...
石川啄木 「鳥影」
...けれども苦しいその努力はいつも無駄に終ってただ...
伊藤野枝 「出奔」
...それぞれ自分達の身うちに熱病やみのやうな胸苦しい動悸を覚えながらも...
薄田泣菫 「独楽園」
...甚だ重苦しい...
太宰治 「貪婪禍」
...もつと憂欝な重苦しい心持を期待した...
田山録弥 「赤い鳥居」
...重苦しい苦悩の下から...
徳田秋声 「仮装人物」
...「お苦しいことって何なの...
豊島与志雄 「運命のままに」
...頭の中だけに狭められたこの息苦しい世界を...
豊島与志雄 「反抗」
...「助けてくれ、苦しい、――苦しい」平次とガラッ八はもう躊躇(ちゅうちょ)しませんでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...――末期(まつご)の苦しい息の下から...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何という重苦しい...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...いっそう悲惨な苦しい隷従であると述べている1)...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...未亡人の生きかたに絡む様々の苦しい絆は...
宮本百合子 「合図の旗」
...常に恋しくばかり思われて苦しいために...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...非常に悲しがっておいでになった、故人を哀れな存在とは見たが、現在の帝王と后(きさき)があれほど御大切にあそばされる皇子で、御容貌(ようぼう)といい、学才と申して今の世に並ぶ人もない方で、すぐれた夫人たちをお持ちになりながら、あの人に心をお傾け尽くしになり、修法、読経(どきょう)、祭り、祓(はらい)とその道々で御恢復(かいふく)のことに騒ぎ立っているのも、ただあの人の死の悲しみによってのことではないか、自分も今日の身になっていて、帝(みかど)の御女(おんむすめ)を妻にしながら、可憐(かれん)なあの人を思ったことは第一の妻に劣らなかったではないか、まして死んでしまった今の悲しみはどうしようもないほどに思われる、見苦しい、こんなふうにはほかから見られまいと忍んでいるのであるがと薫は思い乱れながら「人非木石皆有情(ひとほくせきにあらずみなうじやう)、不如不逢傾城色(しかずけいせいのいろにあはざるに)」と口ずさんで寝室にはいった...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...志保は胸苦しいほどの思いでそう念じた...
山本周五郎 「菊屋敷」
...……嗚呼(ああ)苦しい...
夢野久作 「白髪小僧」
...線香の芳香(かおり)が暗い部屋の中に息苦しい程みちみちた...
夢野久作 「名君忠之」
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