...英臣は苔蒸せる石の動かざるごとく緘黙(かんもく)した...
泉鏡花 「婦系図」
...苔(こけ)や海草が生え...
海野十三 「地球要塞」
...苔(こけ)の深く蒸(む)した墓...
田山花袋 「ある僧の奇蹟」
...これは多分複眼の多数のレンズの作用で丁度光(ひか)り苔(ごけ)の場合と同じような反射をするせいと思われる...
寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
...この本堂の屋根の一部と、寂然(ひっそり)した広い庭と、苔生した地面と、平らな石畳の道と、楓の並木のしなやかな枝葉と、清らかな空気とを、重々しい御門の向うに眺めては、その奥ゆかしい寂しい風致に、私は幾度心を打たれたことであろう! けれども御門の柱に、「猥リニ出入ヲ禁ズ」という札が掛っていたので、私は一度も中にはいったことはなかった...
豊島与志雄 「或る女の手記」
...一面に緑色の苔に蔽われてるのを見出して...
豊島与志雄 「愚かな一日」
...苔生した古い樹皮と...
豊島与志雄 「梅花の気品」
...真白な天然米の海苔茶漬の方が有難いから...
中谷宇吉郎 「稲の一日」
...苔(こけ)も生えていないところであるから...
中谷宇吉郎 「黒い月の世界」
...ジメジメした苔(こけ)の上に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...苔を生している」「そんなら...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...常にジメジメした苔のようなものがさわる...
久生十蘭 「魔都」
...歌うたう人であったムルタはそのとき矢の届くぐらい離れている苔のなかの小さな沢に生えている蘆(あし)の方に歩いて行った...
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 松村みね子訳 「精」
...まるで一休寺にある杉苔といふ苔は古い錦のつづれのやうに見えて來て...
室生犀星 「京洛日記」
...こちら向け春日軒の褄なる蝉燈籠(とうろう)の蝉の羽くらき若葉蔭まだ角も出ぬ小牡鹿(さをしか)に驚かされし儷人(よきひと)よ苔緑なる石の上に右手なる菓子を投げたまへ戀はせじものふたゝびは君が袂もひかざらむ夕眉をひらいて歸れとや君...
横瀬夜雨 「花守」
...何百年か知れない青苔が一面にながめられる...
吉川英治 「新書太閤記」
...荒浪の打ち寄せる磯の大きな岩の肌に着いた海苔を板片などで搖き取つて乾すものです...
若山牧水 「樹木とその葉」
...利根山奥の低(ひく)き所(ところ)は山毛欅帯に属(ぞく)し、高(たか)きは白檜帯に属す、最高なる所は偃松帯に属(ぞく)すれども甚だ狭(せま)しとす、之を以て山奥の入口は山の頂上に深緑色の五葉松繁茂(はんも)し、其他は凡て淡緑色の山毛欅樹繁茂す、山奥の深(ふか)き所(ところ)に至(いた)れば黒緑色の白檜山半以上に茂(しげ)り、其以下は猶山毛欅樹多し、故に山々常に劃然(くわくぜん)として二分せられ、上は深緑、下は淡緑、其景実(じつ)に画(えが)くが如きなり、此他石南樹、「ななかまど」「さはふたぎ」、白樺、楢類等多しとす、草類に於ては「わうれん」、「ごぜんたちばな」、「いはべんけいさう」、「まひづるさう」、「まんねんすき」、「ひかげのかづら」、毛氈苔、苔桃、「いはかがみ」、「ぎんらんさう」、等多し、菌類に於ては「みの茸」、まひ茸、黒ほざ茸、す茸、「こぼりもだし茸」、等食すべきもの実(じつ)に多し...
渡邊千吉郎 「利根水源探検紀行」
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