...その手紙は思いもよらないほかの男から妻へ宛てた艶書(えんしょ)だったのだ...
芥川龍之介 「開化の良人」
...あるいは艶書合(えんしょあわ)せなどが...
芥川龍之介 「邪宗門」
...二人が艶書をとりかはすをしかと見とどけたと申すものも...
芥川龍之介 「奉教人の死」
...清(しん)代第一の艶書...
泉鏡花 「薄紅梅」
...島原の遊女が昵懇客(なじみきゃく)へおくる艶書の代筆までしたことがあった...
薄田泣菫 「艸木虫魚」
...これは過去一年間に五十嵐と細君との間に取り交はされた艶書の殼である...
高濱虚子 「俳諧師」
...殊にそのぎら/\光る眼は先づ艶書の束に止まり...
高濱虚子 「俳諧師」
...とにかく艶書などの御工夫もあれこれなさいました御様子で...
太宰治 「右大臣実朝」
...艶書は父からのものが三通...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...それはお園が京都で修業していた時に貰った艶書であった...
小泉八雲 Lafcadio Hearn 戸川明三訳 「葬られたる秘密」
...大胆にも一通の艶書(えんしょ)二重(ふたえ)封(ふう)にして表書きを女文字(もじ)に...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...固々(もともと)恋人に送る艶書(えんしょ)ほど熱烈な真心(まごころ)を籠(こ)めたものでないのは覚悟の前である...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...この女連には武右衛門君が頭痛に病んでいる艶書事件が...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...金田の娘に艶書(えんしょ)を送ったんだ」「え? あの大頭がですか...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...中には真実籠(こ)めし艶書(えんしょ)を贈りて好(よ)き返事をと促すもあり...
福田英子 「妾の半生涯」
...塚越は運動場に艶書を落したのを生徒監に拾はれたのが...
牧野信一 「塚越の話」
...そば屋或ひは洋食屋等の飲食店に立入つたことが見つかれば五日間の停学、袴を着けないで外出すると一日の謹慎、頭髪を三分刈にしたりもみあげを短く切れば体操教員から拳固で一つ擲られ、自転車に乗ると始末書を徴発され、新しい文学書を翻けば修身点を引かれ、艶書は退学、遊廓散歩は無期停学、洋服で下駄をはくとこれはまた擲られ、流行歌を吟ずると保証人が呼び出され、ハモニカ、バイオリン等を弾奏すると、艶書を書きはしないかといふ嫌疑を受け、劇場出入は三日間の停学、運動シヤツにマークをつけると運動禁止、好天気の時に足駄をはくと、雨の日に跣足の登校を命ぜられ、夜間外出は夏期に限り規定の服装の下に海岸散歩七時まで許可、但し祭礼の場合は神楽見物に限り九時まで許可――以上は厳則の一端に過ぎない...
牧野信一 「貧しき日録」
...艶書、バイオリン弾奏、文学書閲読、遊廓散歩等の悪事を発いて制裁を加へる一味の不良正義党が学生間に自づと組織されて、彼はその党の一員だつたが、彼等のその他の生活は悉く当局の忌諱に触れることばかりで、その方面では彼は煽動的張本人であつた...
牧野信一 「貧しき日録」
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