...わたくしは、その晩、夜一夜(よっぴて)、ちょうど愛の抱擁をした人間が女の体臭を大切にもっているように、その腐肉の悪臭、腐って行くわたくしの愛人の臭いを大切にまもっていたのでした...
モオパッサン 秋田滋訳 「墓」
...腐肉を虫蛆(ちうそ)の食としたるが如し...
芥川龍之介 「開化の殺人」
...死人の腐肉を喰べた人間の眼ですよ」「そりゃ...
海野十三 「赤耀館事件の真相」
...またたく間に蛆(うじ)が繁殖(はんしょく)して腐肉(ふにく)の最後の一片(ぺん)まできれいにしゃぶりつくして白骨(はっこつ)と羽毛(うもう)のみを残す...
寺田寅彦 「蛆の効用」
...これは彼らが腐肉や糞堆(ふんたい)をその定住の楽土としているからであろう...
寺田寅彦 「自由画稿」
...鳥は鮮魚を食い尽くしたが布切れの下の腐肉には気づかなかったとある...
寺田寅彦 「とんびと油揚」
...腐肉を突きつけられてゐるやうな匂ひとが...
南部修太郎 「疑惑」
...腐肉(ふにく)のやうな色餓鬼(いろがき)の市十郎は...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...くづれる肉體蝙蝠のむらがつてゐる野原の中でわたしはくづれてゆく肉體の柱(はしら)をながめたそれは宵闇にさびしくふるへて影にそよぐ死(しに)びと草(ぐさ)のやうになまぐさくぞろぞろと蛆蟲の這ふ腐肉のやうに醜くかつた...
萩原朔太郎 「青猫」
...運命の暗い月夜を翔けさり夜浪によごれた腐肉をついばみ泣きゐたりしがああ遠く 飛翔し去つてかへらず...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...それは宵闇にさびしくふるへて影にそよぐ死(しに)びと草(ぐさ)のやうになまぐさくぞろぞろと蛆蟲の這ふ腐肉のやうに醜くかつた...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...京の山科の地蔵堂で一塊の腐肉となって世を去った癩病やみ...
久生十蘭 「うすゆき抄」
...骨についている腐肉を匙で掻きとって蒼朮(そうじゅつ)の煎汁で晒し...
久生十蘭 「新西遊記」
...殊にその腐肉を嗜(この)み...
南方熊楠 「十二支考」
...何ものでもない腐肉の如きものだと思われるのであった...
横光利一 「旅愁」
...わざわざ長崎から高価な代金をもって取り寄せた材料をつかわずに、むさい墓場などを掘り返して」「な、なにをいってやがんでい」「墓場をあばいて、死人の腐肉から、何をとるつもりなのだ...
吉川英治 「銀河まつり」
...窒息(ちっそく)の苦悩をしながら腐肉(ふにく)を抱えているものにすぎない...
吉川英治 「新書太閤記」
...主人公がいささかな腐肉の附いた牛骨を道で拾い...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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