...「ねえ、お母さん、こゝへ、いくつ泊るの?」「明日までよ」「明日、姫路へかへるの?」「さうね、そりやア、わからないわ、どんなになるか‥‥」「お父さん、いつ來るの?」「何處へ?」「だつて、お父さん、僕にすぐ歸るつて云つたよ‥‥」「御飯つぶをちらかさないでおあがんなさい、――あゝ、暑いねえ、なンてむしむしする晩だらう‥‥」「とてもおいしいよ、母さん食べない?」「いゝから召上れ‥‥」ふじ子は白い蚊帳のなかへはいつて、肌ぬぎになると、濡れ手拭で、胸や腕をきしきしこすつた...
林芙美子 「濡れた葦」
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