...空は絶えず雲の翳(かげ)に遮(さえぎ)られて...
芥川龍之介 「路上」
...火に翳した羽織からは湯気が立つてゐる...
石川啄木 「札幌」
...番傘(ばんがさ)を低く翳(かざ)し...
泉鏡花 「縁結び」
...」とあるじも火に翳(かざ)して...
泉鏡花 「女客」
...いかに日本人が陰翳の秘密を理解し...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...―――そのために室内がもやもやと翳(かげ)って...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...翳ったその顔には両眼がただならず輝いていた...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「サレーダイン公爵の罪業」
...そうして白い指を火鉢(ひばち)の上に翳(かざ)した...
夏目漱石 「行人」
...普通(なみ)の箱火鉢と同じ事なので二人向い合せに手を翳(かざ)すと...
夏目漱石 「行人」
...宗助は暗い座敷の中で黙然(もくねん)と手焙(てあぶり)へ手を翳(かざ)していた...
夏目漱石 「門」
...宗助(そうすけ)は暗(くら)い座敷(ざしき)の中(なか)で默然(もくねん)と手焙(てあぶり)へ手(て)を翳(かざ)してゐた...
夏目漱石 「門」
...一(ひと)つ火鉢(ひばち)の兩側(りやうがは)に手(て)を翳(かざ)しながら...
夏目漱石 「門」
...その長い影でドニェープルを翳さうとするが...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...延々とせせらぐ――そう灰色の森――そばの湿地ここでは蛙と蜥蜴が野生していて――そう陰欝な湖沼には食屍鬼が潜んでいる――そう不浄きわまる各地――そのそれぞれ陰り翳る隅では――旅する者は驚懼とともに包み隠されていた過去の記憶に相見(あいまみ)える――屍衣まとう姿形が急に出(いで)ては息を吐き旅する者のそばを通り過ぎてゆく――もう久しい友たちさえ白の衣苦しみつつ土に――天に帰ったはずなのに...
エドガー・A・ポオ Edger A. Poe 「ポオ異界詩集」
...金泥に姥桜の散しを置いた小型の翳扇が一面欠けてゐるだけで...
牧野信一 「籔のほとり」
...その濤のしぶきの間に益陰翳こまやかに黒くはっきりと耀いている二つの眼を見失わなかったということは...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...主人の頭上に翳(かざ)し懸けた...
吉川英治 「上杉謙信」
...忌わしい翳が、又黒吉を悒欝(ゆううつ)の底に押戻した...
蘭郁二郎 「夢鬼」
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