...小使が火を入れたばかりの火鉢の上に翳(かざ)した...
石川啄木 「道」
...その扇面を顔のあたりに翳(かざ)して歩いていた...
海野十三 「雷」
...風の中で息をするために鼻と口とに手を翳す...
江南文三 「佐渡が島のこと」
...じいっとみているとこっちの眼のまえがもやもやと翳(かげ)って来るようでその人の身のまわりにだけ霞(かすみ)がたなびいているようにおもえる...
谷崎潤一郎 「蘆刈」
...裂(さ)き竹(だけ)を格子(かうし)の目(め)に編(あ)んでいゝ加減(かげん)の大(おほ)きさに成(な)るとぐるりと四方(はう)を一つに纏(まと)めて括(くゝ)つた花籠(はなかご)も二つ翳(かざ)された...
長塚節 「土」
...彼(かれ)は落葉(おちば)を攫(つか)んでは竈(かまど)の口(くち)に投(とう)じてぼうぼうと燃(も)えあがる焔(ほのほ)に手(て)を翳(かざ)した...
長塚節 「土」
...さうして此(この)変化は既に独逸が真向(まつかう)に振り翳(かざ)してゐる軍国主義の勝利と見るより外に仕方がない...
夏目漱石 「点頭録」
...大尉が劒を翳して先頭に立つて渡つた...
長谷川時雨 「日本橋あたり」
...陽の翳(かげ)ってゆく田舎路(いなかみち)を歩いて行く...
原民喜 「苦しく美しき夏」
...さきほどまで静まっていた空気のなかにどす黒い翳(かげ)りが差すと...
原民喜 「死のなかの風景」
...銃士は感情の翳の差さぬ冷静な面持で...
久生十蘭 「魔都」
...その長い影でドニェープルを翳さうとするが...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...(一八一五年)*無限な静寂の翳(かげ)...
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig van Beethoven 片山敏彦訳 「ベートーヴェンの生涯」
...何か性格に陰翳ができてきて...
堀辰雄 「若菜の卷など」
...水洗便所と昔乍らの厠とを比較云々された谷崎潤一郎氏の「陰翳礼讃」を引用するまでもあるまい...
正岡容 「寄席風流」
...地下室の酒場らしい濃厚な陰翳がなさすぎる...
宮本百合子 「印象」
...参戸川は両手を火鉢に翳(かざ)して...
森鴎外 「独身」
...口のはたに翳(かざ)して...
吉川英治 「親鸞」
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