...「――義理でも、お父つあんぢやないか、そんなひどい口をきくもんぢやないよ」おはまはまだ三十七であつた、――おしげの実父と死別れてから、色んな男とついたり離れたりして来た、篠原新吉と云ふ公園で何をしてゐるか誰も知らない男と一しよになつたのは、去年の夏すぎで、彼女よりも年下であつた、別に形相(ぎやうさう)は恐しくはないが、油断のならない眼を冷く据ゑて、グリグリに青く頭を刈りつめ、ずんぐりと脊は低くかつた、全体にうす気味が悪いと云ふのが当つてゐた...
武田麟太郎 「一の酉」
...甥(をひ)や彼の肉親の者はほんの義理で電報を打つたつもりらしく...
武田麟太郎 「現代詩」
...至誠は必ず通じます』『義理で出す金でなく...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...余(あんま)り大きな顔をして表を歩けた義理でもないじゃないか」養蚕室にあてた例の薄暗い八畳で...
徳田秋声 「あらくれ」
...今日はお義理でね...
徳田秋聲 「絶望」
...友達の義理で退引(のっぴき)ならず預かってはみたものの...
中里介山 「大菩薩峠」
...お義理だから集まっては来たけれども、いずれも、むっつりとした顔をして、特に何かの故人のしのびごとを言い出でようという者もなく、どうして発見して、誰がいつ持って来たかということを、念を押す者もなく、よく見つかったという者もなく、悪く持ち帰したという者もなく、全くお義理で、イヤイヤながら寄って来たという空気が充満して、全く白けきったお通夜の席が出来上りました...
中里介山 「大菩薩峠」
...向(むこう)で口なんぞ利(き)けた義理でもないんだから」姉の言葉は出来るだけ健三の意を迎えるような調子であった...
夏目漱石 「道草」
...――お前の義理でも驚かなくちや惡からう...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...義理は義理ですよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...町内の義理で今年の三月十日...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...中村の親分への義理で出演...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...実は義理で仕方がなく...
牧野信一 「愚かな朝の話」
...いま言った義理で手荒いことはいっさい封じられたようなもんでね...
三好十郎 「胎内」
...義理で飲んでやるんだというふうに...
山本周五郎 「雨あがる」
...ほんの義理で来ているので...
夢野久作 「鼻の表現」
...一宿の義理である...
吉川英治 「新書太閤記」
...飲めた義理ではござりますまいに」と...
吉川英治 「新書太閤記」
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