...平素心に留めておきます...
...▲一介の活版職工 福田武三郎は本所厩橋凸版印刷株式會社の植字職工にして、本所番場町七六森長七方の二階三疊の座敷に起臥し居る微々たる一職工なるが、平素心理、衞生、英文に關する幾多の書籍を藏し、又社會主義に關する書籍を耽讀せり、同人は島根縣の生れにして昨年九月淺草區小島町七三中村八十吉の世話にて凸版會社に入り日給七十二錢を受けしも、高橋勝作と僞名し其後本年七月に至り府下寺島村八九三マルテロ社より森方に轉宿し來りしものにして、一日も會社を休みし事なく、下宿に在つても酒煙草を飮まず只一囘ビールを飮みて酩酊し其夜吉原に遊びし事ありと、下宿の主人森長七の承諾を得て福田の居室を見るに狹き三疊の座敷に大なる机を控へ其の周圍は悉く書籍を以て埋まり如何にも書籍の裡に起臥し居たるものゝ如し、福田が最近友人に送りし書翰を見るに其思想頗る變化せしものゝ如く、彼の大阪に於ける友人が彼の活動を賞讚して主義の爲めに奮鬪せよと激したる書翰に對し左の如く答へ居れり...
石川啄木 「日本無政府主義者陰謀事件經過及び附帶現象」
...ちょうど、そのように、平素心の中が、余計な、いらざる妄想(もうぞう)や、執着という垢(あか)でいっぱいになっていると、いざという場合に臨んで、うろたえ騒がなくてはなりません...
高神覚昇 「般若心経講義」
...“無明実相即仏性”素心を失ふこと勿れ...
種田山頭火 「其中日記」
...素心庵とかいふので白い衣の尼さんが居る...
長塚節 「松蟲草」
...ところが、世間の誰れもが、この古語に在る蘭を今日いう蘭科(Orchidaceae)植物中の、いわゆる「蘭」だと早合点して、皇帝の御旅情を御慰め奉るに、寒蘭だの、一茎九華だの、素心蘭だの、金稜辺だの、駿河蘭だの、春蘭だのの Cymbidium-Orchids 類の盆栽を御清覧に供したと、これもまた、当時の新聞紙が報道していた...
牧野富太郎 「植物記」
...虚飾から離れて素心になることではあるまいか...
吉川英治 「折々の記」
...素心にほほ笑まれた...
吉川英治 「私本太平記」
...素心で見れば「菊水帖」は字ヅラもきれいだし...
吉川英治 「随筆 私本太平記」
...文学的素心で自分の正成を書くしか方法はないのである...
吉川英治 「随筆 私本太平記」
...読者の素心による思い思いに読まれるのであろうとおもう...
吉川英治 「随筆 新平家」
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