...客遊既に一年半、故国の趣味と生活とに対する郷愁を胸の奥に持つてゐる私に取つては、その微妙な色彩、その簡素な描線、そのほのかな静かな気分が、殆んど一種の救ひとして働きかけて来た...
阿部次郎 「帰来」
...簡素なデスクと長イスが二脚置いてあり...
江戸川乱歩 「影男」
...彼の禁欲的な簡素な生活は十二分の享受のための前提であり準備である...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...簡素な日本趣味がありがたかつた...
種田山頭火 「行乞記」
...簡素な卓子(テイブル)と椅子(いす)が並んでおり...
徳田秋声 「仮装人物」
...簡素な、比較的かつちりした私の気分によくそぐふた小屋であるけれど、もうそここゝに朽腐したところや、壊れたところがあつて、側面へまはつてみると、よくもかうして寝起きがしてゐられると思ふくらゐであつた...
徳田秋聲 「余震の一夜」
...過去の賢明簡素な芸術を貫いてる美の本能とが...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...淡緑色の簡素なスーツをつけ...
豊島与志雄 「憑きもの」
...社殿の内部も簡素なものであった...
豊島与志雄 「文学以前」
...この楽器による古朴(こぼく)な模写音楽の簡素な美しさは...
野村胡堂 「楽聖物語」
...簡素な美しい作曲がある...
野村胡堂 「楽聖物語」
...ひどく簡素な生活の間を生ひ育つた...
葉山嘉樹 「氷雨」
...緑色の鎧扉のある簡素な別荘に引退して...
堀口九萬一 「フランソア・コッペ訪問記」
...簡素な有徳な社会状態には幾分でも広く行われることはあり得ないであろう...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...簡素な器で茶を立てた時...
柳宗悦 「工藝の道」
...薄暗い室や簡素な道具類や...
柳宗悦 「和紙の教へ」
...昔風のなつかし味のある簡素な看板なぞは...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...高原の明るさの中にある簡素な学究の一家庭と見ていれば...
吉川英治 「随筆 新平家」
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