...泣く/\屍をいだきて家にかへり、床に安して、さて、しめやかに青き燈の下に、勉めてふたゝび机に就けば、稿本は開きて故の如し、見れば、源氏の物語、若菜の卷、「さりとも、琴ばかりは彈き取り給ひつらむ、云云、晝はいと人しげく、なほ、ひとたびもゆしあんずるいとまも、心あわたゞしければ、夜々なむしづかに、」云云、「ゆ」は「搖ること」なり、「あんずる」は「按ずる」にて、「左手にて絃を搖り押す」なり、又、紅葉の賀の卷、「箏の琴は、云云、いとうつくしう彈き給ふ、ちひさき御程に、さしやりてゆし給ふ御手つき、いとうつくしければ、」おのれが思ひなしにや、讀むにえたへで机おしやりぬ、この夜一夜、おのれが胸は、ゆしあんぜられて夢を結ばず...
大槻文彦 「ことばのうみのおくがき」
...今日でも箏曲(そうきょく)や地唄(じうた)のことを「当道音楽」と称しているので...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...軽く古い箏(こと)の絃(いと)に指を触れながら...
長谷川時雨 「江木欣々女史」
...それを、大きな掌(てのひら)は、遠くからおさえるように動かされて、「あれは美人じゃからなあ――石河(いしかわ)の夕千鳥には、彼女の趣味から来る風情(ふぜい)が添うが――わしが、今感心しておる女子(ひと)は、箏(こと)のこととなると、横浜から、箏を抱いてくる...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...丁度絃(いと)の締まった箏を...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...ちょこちょこといって箏の前へ坐ったのだった...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...箏の絃(いと)の上を掌(てのひら)で拭(ふ)き消すようにする...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...壁によせて立ててある「吹上(ふきあ)げ」という銘(な)のある箏(こと)に手をかけていた...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...箏は浜子に頼みたいといった...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...それに、劇場で、箏を主とし、しかも、あの、芸術的香気の高い、いわゆるお賑(にぎ)やかなケレンの多くない、まことに、どっちかといえば手のこまない、一本一本絃(いと)の音をよく聴かせようとする、テンポの早くない箏を、用いさせようというのには、よほど劇場当事者によい印象を与えていることを思わなければならない...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...『若草』という箏の絃に触れて見たい衝動を...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...来年は箏を弾いてから五十年になるから...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...この箏について説明をして...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...彼女の弾箏五十年の祝賀にそなえたいと思ううちに...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...私は箏を中心に音楽生活をしているおかげで人生は明るい...
宮城道雄 「五十年をかえりみて」
...いずれの時も箏と二人づれであった...
宮城道雄 「五十年をかえりみて」
...箏の音色がほんとうに分ってきたようにおぼえている...
宮城道雄 「五十年をかえりみて」
...私は箏をもっと勉強をしたいという心持は変わらなかった...
宮城道雄 「私の若い頃」
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