...久しい間人生と運命との間に戦ひ馴らされて来た、天空海濶の大きな気象をもつたものにも、どうかすると、老年になつてまでも、幼い少年のころの無邪気な感情の傾き、小さな好き嫌ひといつたやうなものをすつかりは離れきれないのがあるやうに、自然はあの大きなうちむらさきや、怪奇な仏手柑では、どうしても表現し得られない、けちで、稚拙な生命と、その幻想とを持つてゐる...
薄田泣菫 「独楽園」
...学芸会みたいな稚拙なところもある...
太宰治 「芸術ぎらい」
...僕の稚拙な筆をもどかしがり...
太宰治 「道化の華」
...喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし...
太宰治 「人間失格」
...純粋な白金で造られた精巧な楽器を稚拙な幼童がもてあそんでいるような...
立原道造 「夏秋表」
...「自然」を実験室内に捕えきたってあらゆる稚拙な「試み」を「実験」の試練にかけて篩(ふる)い分けるという事...
寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
...きわめて稚拙なロシア出来の石版画が...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...木食上人(もくじきしょうにん)の稚拙なる彫刻がもてはやさるるところを以て見れば...
中里介山 「大菩薩峠」
...「この筆蹟(て)に覺えはありませんか」「全く見たことも無い拙い字で」それは子供の手習ひのやうな稚拙な文字で...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...自分の作品の上の技巧はかえって稚拙なもので...
林芙美子 「文学的自叙伝」
...その稚拙な言動や思考形態も一種の魅力と映じてゐたものが...
北條民雄 「道化芝居」
...稚拙な彫りのある椅子などを見れば分かる...
堀辰雄 「恢復期」
...それに彫られてある模樣の稚拙な感じと云ひ...
堀辰雄 「恢復期」
...彼柳丸には稚拙な笑い絵を描いては仲間に無料でくれてやる道楽があって...
正岡容 「艶色落語講談鑑賞」
...稚拙なるは無心を意味し...
柳宗悦 「工藝の道」
...稚拙な、子どものような仮名文字で、やっと、短いことばを書きつづった...
吉川英治 「私本太平記」
...あの稚拙な人物像を...
和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
...これらの稚拙な埴輪人形を作っていた民族が...
和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
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