...私はこの虫の稚拙な鳴声を一度立聴したいものだと思つて...
薄田泣菫 「独楽園」
...久しい間人生と運命との間に戦ひ馴らされて来た、天空海濶の大きな気象をもつたものにも、どうかすると、老年になつてまでも、幼い少年のころの無邪気な感情の傾き、小さな好き嫌ひといつたやうなものをすつかりは離れきれないのがあるやうに、自然はあの大きなうちむらさきや、怪奇な仏手柑では、どうしても表現し得られない、けちで、稚拙な生命と、その幻想とを持つてゐる...
薄田泣菫 「独楽園」
...しかも稚拙な直訳である...
太宰治 「猿面冠者」
...喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし...
太宰治 「人間失格」
...それを飾る愉快に稚拙なペン画を嬉しがったりした...
寺田寅彦 「科学に志す人へ」
...塩釜街道(かいどう)に白菊うえて何をきくきくありゃ便りきく唄(うた)はどこも稚拙な洒落(しゃれ)だが...
徳田秋声 「縮図」
...きわめて稚拙なロシア出来の石版画が...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...私はこの稚拙な、しかし清純な絵を見ているうちに、何か胸たぎる想いが湧いて来た...
中井正一 「地方文化運動報告」
...自分の作品の上の技巧はかえって稚拙なもので...
林芙美子 「文学的自叙伝」
...稚拙ながら、著者の天分を窺ふに足る作品であつた...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...稚拙な味とでもいつたものか...
堀辰雄 「Ein Zwei Drei」
...稚拙な彫りのある椅子などを見れば分かる...
堀辰雄 「恢復期」
...それに彫られてある模様の稚拙な感じと云い...
堀辰雄 「恢復期」
...極めて英作文の不得意な自分が辛うじて書いた稚拙な英文手紙の抜萃である...
牧野信一 「消息抄(近頃書いた或る私の手紙から。)」
...稚拙なるは無心を意味し...
柳宗悦 「工藝の道」
...稚拙な、子どものような仮名文字で、やっと、短いことばを書きつづった...
吉川英治 「私本太平記」
...しかし稚拙ながらにも...
和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
...あの稚拙な人物像を...
和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
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