...稍あつてから、『今夜は何もしなくても可いから、先刻教へたアノ洋燈(ランプ)をつけて、四畳に行つてお寝(やす)み、蒲団は其処の押入に入つてある筈だし、それから、まだ慣れぬうちは夜中に目をさまして便所(はばかり)にでもゆく時、戸惑ひしては不可(いけぬ)から、洋燈は細めて危なくない所に置いたら可いだらう...
石川啄木 「天鵞絨」
...谷を隔てて稍(やや)遠く見たるなかなかに趣深く覚ゆ...
伊藤左千夫 「滝見の旅」
...年(とし)稍(やゝ)倹(けん)して穀(こく)の価(ねだん)日々に躍(あがり)...
京山人百樹刪定 「北越雪譜」
...額は稍(やゝ)太目の赤い絹の打紐で吊すやうになつてゐる...
鈴木三重吉 「桑の実」
...稍や之を説明し難き点...
高木敏雄 「比較神話学」
...丸めた頭の形の稍いびつなのに目を留めて哀れに思ふ...
高濱虚子 「俳諧師」
...従って実際には平均値的な知識人よりも稍々高い知識水準を有っているかも知れぬ...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...稍々其の顏面を曇翳を浮かべつゝ...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...さうして稍恢復した私の運命は私を妻と同棲せしめることになりました...
長塚節 「教師」
...然し僕の行為その物に対しては矛盾も何も犯していない積りだ」「じゃ」と平岡は稍声を高めた...
夏目漱石 「それから」
...肩を稍そばめ加減にして端坐した富士孃の...
野上豐一郎 「湖水めぐり」
...稍々(やや)自分の有(も)ってる抽象的観念に脈の通うような人があるものだ...
二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
...その種の変な青年達が稍ともすれば...
牧野信一 「鏡地獄」
...鋸山にさしかかると彼の脚どりは稍々ともすると後れ勝ちで...
牧野信一 「木枯の吹くころ」
...威厳に充ちた稍や前屈みの姿でこつ/\と歩みを運ばれた...
牧野信一 「文学とは何ぞや」
...車の通るのも稀になつてゐたので稍暫くたつてから漸く一台のタクシーを呼び止めた...
牧野信一 「露路の友」
...いつも稍伏目勝の瞳を動かさず...
水上滝太郎 「大阪の宿」
...少くも大衆文學の稍々優れたものと...
吉川英治 「折々の記」
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