...一『矢筈草(やはずぐさ)』と題しておもひ出(いづ)るままにおのが身の古疵(ふるきず)かたり出(い)でて筆とる家業(なりわい)の責(せめ)ふさがばや...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...この『矢筈草』目にせば遂にはまことに憤(いきどお)りたまふべし...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...『矢筈草』とは過(すぎ)つる年わが大久保(おおくぼ)の家(いえ)にありける八重(やえ)といふ妓(ぎ)の事を記(しる)すものなれば...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...前車(ぜんしゃ)の覆轍(ふくてつ)以てそれぞれ身の用心ともなしたまはばこの一篇の『矢筈草』豈(あに)徒(いたずら)に男女の痴情(ちじょう)を種とする売文とのみ蔑(さげす)むを得んや...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...四矢筈草は俗に現(げん)の証拠(しょうこ)といふ薬草なること...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...「矢筈草俗に現の証拠といふこの草をとりみそ汁にて食する時は痢病(りびょう)に甚(はなはだ)妙なり又瘧病(おこり)及び疫病等(えきびょうなど)にも甚効(こう)あり云々(うんぬん)」...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...好まぬ酒も家業なれば是非もなく呑過して腹いたむる折々日本橋通一丁目反魂丹(はんごんたん)売る老舗(しにせ)(その名失念したり)に人を遣(つかわ)して矢筈草購(あがな)はせ土瓶(どびん)に煎(せん)じて茶の代りに呑みゐたりき...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...今は矢筈草押込みて煎じつめ夜(よ)ごと眠(ねむり)につく時持薬(じやく)にする身とはなり果てけり...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...さらば今は矢筈草も用なきこそ目出度けれ...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...わが身いまだ妓籍(ぎせき)を脱せざりし頃絶えず用ひたるかの矢筈草今も四谷の家(いえ)にあり...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...直(ただち)に人を走(は)せて矢筈草取寄せ煎じけり...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...やがては矢筈草生ずる土手もなくなるべしと思ひ...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...その人去りて庭の籬(まがき)には摘むものもなくて矢筈草徒(いたずら)に生(お)ひはびこりぬ...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...われも一夜(いちや)大久保を去りて築地(つきじ)に独棲(どくせい)しければかの矢筈草もその後(のち)はいかがなりけん...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...『矢筈草』の一篇もとこの事を書綴りて愛読者諸君のお慰みにせんと欲せしなり...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...十五『矢筈草』いよいよこれより本題に入(い)らざるべからざる所となりぬ...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...永井先生の「矢筈草」の発端...
正岡容 「随筆 寄席風俗」
...それが「矢筈草」の発端になるとは誰が知らう...
吉井勇 「青春回顧」
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