...意味ありげな瞬(またた)きを送つて見せた...
芥川龍之介 「老いたる素戔嗚尊」
...高がこの殿の命一つ、平太夫が太刀ばかりで、見事申し受けようも、瞬く暇じゃ...
芥川龍之介 「邪宗門」
...伝吉はほとんど一瞬間人違いではないかと云う疑いさえ抱いた...
芥川龍之介 「伝吉の敵打ち」
...すると、その足が、スーッと屋根の方へ引込んで行くような感じがしたが、次の瞬間には、それが恐ろしい勢で、グーンと下へ伸びて来た...
江戸川乱歩 「悪魔の紋章」
...一瞬間さうして動かずに自分の心が外へ移るともう消えてしまつてゐるそのあとに穴が明いて空氣が目に見えて濃厚に動いてゐるまるで温室の中を歩いてゐるやうだ...
千家元麿 「自分は見た」
...また今明るかったと思う所が次の瞬間にはもう暗くなったりするに伴れて...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...つまりその瞬間――どういう筋道をたどってだかは皆目わからないが――やにわに彼は...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...その瞬間から振返って見て感じるであろう・一生の時の短かさの感じ(それは二十年でも二百年でも同じ短かさに決っている)を彼は想像して見る...
中島敦 「狼疾記」
...火(ひ)は瞬間(しゆんかん)に處々(ところ/″\)落(お)ち窪(くぼ)んで窶(やつ)れた屋根(やね)を全(まつた)く包(つゝ)んで畢(しま)つた...
長塚節 「土」
...即ちかの瞬間的描写といふ意向と...
中原中也 「芸術論覚え書」
...最後の瞬間にベッドの上の壁から額ぶちに入ったままの聖母像を取り...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「火夫」
...瞬間、犯人はハンカチか脱脂綿の中へ忍ばせてあったクロロフォルムのアンプールを掌の中で握り潰し、それを後から皇帝の鼻口へ押し当てる...
久生十蘭 「魔都」
...その瞬間妾は人間が眼をもって生まれたことを呪(のろ)った...
平林初之輔 「オパール色の手紙」
...遊星らしく瞬きもせず依然と南空にかかつてゐる...
北條民雄 「続重病室日誌」
...――私は眼を逸(そ)らした――がやがやいう人声が聞えた! 多くの喇叭(らっぱ)の音のような高らかな響きが聞えた! 百雷のような荒々しい軋(きし)り音が聞えた! 炎の壁は急にとびのいた! 私が失神してその深淵のなかへ落ちこもうとした瞬間に...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「落穴と振子」
...次の瞬間には、幾本かの逞(たくま)しい腕が壁をせっせとくずしていた...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「黒猫」
...もとより一瞬間といえども疑いのないこと...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「道化者」
...一瞬悉(ことごと)く同じ思いに囚(とら)われたのではなかろうか...
吉川英治 「新書太閤記」
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