...“わが艦隊は魔の海溝に於(おい)て突然敵の爆薬床に突入し、全滅せるものの如し、わが艦はひとり、可撓性(かとうせい)の合金鋼材にて艦体を製作しありしを以(もっ)て、比較的外傷を蒙(こうむ)ること少かりしも、爆発床へ突入と共に、大震動のため乗組員の半数を喪(うしな)い、あらゆる通信機は、能力を失いたり、仍(よ)りてわれは、僅(わずか)に残れる廻転式磁石を頼りとして、盲目状態に於て、帰港を決意せるも、何時(いつ)如何(いか)なる事態に遭遇するやも量(はか)られざる次第なり”勇敢なるこの潜水艦長の、死の帰還がなければ、キンギン国渡洋進攻艦隊の運命についてはついに知られる日がなかったであろう...
海野十三 「二、〇〇〇年戦争」
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