...熔岩が噴火口より迸流する際は殆んど白熱の状態にある粘著性熔液として火口上に盛り上り遂に倒れ崩るるの状を爲して下方に流下するや否や火口底には爆然たる轟鳴起り同時に火山灰より成れる黒烟驀然として恰も砲門より古綿を發射するが如く高く空中に擲出せられ...
石川成章 「櫻島噴火の概況」
...窓の外では濁流と濁流とが至る所で衝突し、盛り上り、渦を巻き、白泡を立てているのが見えた...
谷崎潤一郎 「細雪」
...顔中へ饂飩粉(うどんこ)に似た白い塊が二三分の厚さにこびり着いて盛り上り...
谷崎潤一郎 「少年」
...ふくれた甲の肉の盛り上りも...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...その割れ目が高く盛り上り...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...盛り上り揺(ゆ)り下ぐる岩蔭の波の下(した)に咲く海アネモネの褪紅(たいこう)...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...左右から盛り上り盛り上り逼(せま)って来るように感じられた...
富ノ沢麟太郎 「あめんちあ」
...菜っ葉が盛り上り...
豊島与志雄 「土地に還る」
...盛り上り……とろりと膏気のありそうな肌をさらして...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...何時までも続く薄気味悪いこの土地の盛り上り...
中谷宇吉郎 「天地創造の話」
...母は掻(か)き馴(な)らしたる灰の盛り上りたるなかに...
夏目漱石 「虞美人草」
...その手は指にふっくらと肉が盛り上り...
原民喜 「忘れがたみ」
...盛り上りが足りない...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...光線は盛り上り広まり伸びて鮮明な像を少年の眼に映す...
北條民雄 「童貞記」
...「長崎屋どの! 三郎兵衛どの! この広海屋一家に対して、どのようなお恨みを持っておいでかは知りませぬが、あの子には罪はない! あの子が、悪さをする筈がない! あの子をお返しなすって下さいまし、家も惜しくはありませぬ! この、わたしが、殺されようと、助かろうと、それもかまいませぬ! あの子だけを、お返し下さいまし!」「は、は、は! 泣きおるわ! わめきおるわ! うらみがあったら、そこにおる広海屋に言え! 亭主に言え!」と、こんな言葉だけは、すじが立つことをいって、長崎屋は、ふたたび、ゲラゲラ笑いになって、目をあげて、闇空を焦す炎が、大波のように、渦巻き、崩れ、盛り上り、なびき伏し、万態の変化の妙をつくしつつ、果しもなく、金砂子(きんすなご)を八方に撒き散らすのを眺めながら、「ほほう、ほほう、黄金の粉が、空一めんにひろがって行くぞ! 広海屋、見ろ、おぬし一代の栄華、贅沢(ぜいたく)――日本一の見物(みもの)じゃぞ! すばらしいのう! これを見ながら一ぱいはどうじゃ! 酒を持って来い! は、は、酒肴(しゅこう)の用意をととのえろ! ほほう! ほほう! 何ともいえぬ眺めじゃなあ」「おのれ、何をぬかすぞ! それ、この人殺し、火つけの罪人、早う、お役人を呼んで――」と、番頭の一人が、手代どもにいうのを、フッと、何か、思い当ったような広海屋、狂奮の中にも、キラリと、狡く目をはたらかせて、「待った! お役人衆に、このことを、お知らせするのは、まあ、待った!」「じゃと、申して、みすみす、この科人(とがにん)を――」「待てと言ったら!」と、止めて広海屋は、手鉤(てかぎ)を持った出入りの鳶(とび)に、「おぬし達、この長崎屋を、くくり上げて、ソッと、土蔵の中へ、入れて置いてほしい」「でも、お役人のお叱りをうけては――」「よいと申したら――気が昂ぶっているによって、落ちついてから、わしが、必ず自首させる――さあ、あまり、人目に立たぬうち――」広海屋はセカセカしくいった...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...外に林檎(りんご)か何か菓物(くだもの)を一つ戴く事もあります」大原「それから三日目には何です」お登和「三日目は玉子と牛乳の淡雪(あわゆき)といいまして先ず大きな玉子の白身二つばかり茶筅(ちゃせん)で泡の沢山立つまでよく掻き廻してそれを一合の沸立っている牛乳の中へ交ぜて一度よく混ぜますと牛乳が白身へ交って白い泡がフーッと盛り上ります...
村井弦斎 「食道楽」
...一つの目に見えぬ力となって画面に盛り上り...
夢野久作 「挿絵と闘った話」
...花ごとに、盛り上り、血に燃えて、かすかに戦(わなゝ)く熱情の薔薇よ、一切を吸ひ尽す愛の唇よ...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
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