...薄暗く煙るような議場には議員の顔も疎らであった...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...その時ゆくり無く自分の眼には冬枯のさびれた裏庭の隅に疎らな木立を透かしてガラス張りの大きな白い温室が少し靄に包れて無人島に漂泊した人の憔衰した眼に偶暗い沖を通過する白い朦朧とした汽船を見出した喜びのやうに...
千家元麿 「自分は見た」
...街灯の影も疎らに蓊鬱(おううつ)たる植込みを通して...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...天辺のつるりと剥げた頭には疎らな胡麻塩の毛を後ろの方から両鬢(りょうびん)へかけて撫で付けている...
直木三十五 「大衆文芸作法」
...疎らに立つた芒の穗が戸樋に屆かうとして傾いて居る...
長塚節 「佐渡が島」
...坂を登り切つたら流石(さすが)に息苦し相に胡蝶花(しやが)の花の疎らな草の中へ荷を卸した...
長塚節 「炭燒のむすめ」
...そこにも羊齒(しだ)や笹の疎らな間にほつほつと胡蝶花の花がさいて居る...
長塚節 「炭燒のむすめ」
...此あたりの家々皆叺をつくるとて筵おり繩を綯ふ長繩の薦ゆふ藁の藁砧とゞと聞え來これの葦邊に湖畔には櫟の木疎らにならびたり布雲に叢雲かゝる近江の湖あさ過ぎくればしき鳴くや鵙比叡辻村來迎寺森可成墓冷かに木犀かをる朝庭の木蔭は闇き椰の落葉や志賀の舊都の蹟は大津町の北數町にして錦織といふ所に在り...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...白樺疎らな傾斜の奥に...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...その頃はまだ人家も疎らで残骸はあちこちに眺められた...
原民喜 「永遠のみどり」
...時あたかも樹々の小枝に新緑の若葉もなほ疎らに...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...(造語ではなく昔の人の使ひ古した言葉かも知れないが)正月の五日大方人去りて海のホテルの廊長くなる正月休みで雑沓してゐた海浜ホテルも五日になれば大方引上げて客が疎らになつた...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...夕明り葉無き木立が行く馬の脚と見えつつ風渡るかな疎らな冬木立に夕明りがさして歩いてゆく馬の脚の様に思へる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...痛え目を見るだけよ――な、出なせえ――さあ、出してやるぜ」「あれ――」と、かじかまるのを、肩から襟へ、ゴツゴツした手で、抱きすくめて、引きずり出して、「これ、あばれるな!脛(はぎ)が出らあな! 白いもの、赤いもの、ちらちらするなあ、おれ達にゃあ目の毒だ」「ふ、ふ、ふ、ふ」と、婆さん、疎らな歯を、剥き出して笑って、「丑さん、為さんと来ちゃあ、すごいね...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...赤い疎らな鬚をはやしている...
水野葉舟 「遠野へ」
...人数は疎らだのに...
宮本百合子 「映画」
...本によって売れ方が疎らになったのには困った...
柳田国男 「故郷七十年」
...松の疎らに靡(なび)いた漁村である...
若山牧水 「岬の端」
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