...街灯の影も疎らに蓊鬱(おううつ)たる植込みを通して...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...疎らな灌木の林が山を蔽つて居た...
田山録弥 「草津から伊香保まで」
...天辺のつるりと剥げた頭には疎らな胡麻塩の毛を後ろの方から両鬢(りょうびん)へかけて撫で付けている...
直木三十五 「大衆文芸作法」
...深い樹立を出ると疎らな赤松が見え出して窪んだ草原のやうな所になつた...
長塚節 「鉛筆日抄」
...疎らな松林を出たりはひつたりして幾つかの漁村を過ぎてしと/\ゝ沾れて行く...
長塚節 「佐渡が島」
...そこにも羊齒(しだ)や笹の疎らな間にほつほつと胡蝶花の花がさいて居る...
長塚節 「炭燒のむすめ」
...あたりは低い松が疎らに立つて居て...
長塚節 「松蟲草」
...そこからはバラツクも疎らで...
原民喜 「氷花」
...僕のまはりに疎らになつた人間の足音がまだ続いてゐる...
原民喜 「魔のひととき」
...細かい葉をつけた疎らな木梢(こずえ)をもたげている...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...時あたかも樹々の小枝に新緑の若葉もなほ疎らに...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...私は広い草原に野分だつた風の吹いて居る心持を人馬の疎らに走る象によつてあらはした一種の象徴詩だと思ふ...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...痛え目を見るだけよ――な、出なせえ――さあ、出してやるぜ」「あれ――」と、かじかまるのを、肩から襟へ、ゴツゴツした手で、抱きすくめて、引きずり出して、「これ、あばれるな!脛(はぎ)が出らあな! 白いもの、赤いもの、ちらちらするなあ、おれ達にゃあ目の毒だ」「ふ、ふ、ふ、ふ」と、婆さん、疎らな歯を、剥き出して笑って、「丑さん、為さんと来ちゃあ、すごいね...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...アバラケはマバラケで疎らに少しくあるの義で全く毛無と一つにならぬ...
南方熊楠 「十二支考」
...本によって売れ方が疎らになったのには困った...
柳田国男 「故郷七十年」
...よく晴れたお納戸(なんど)色の空を牧草の原と疎らな楊柳の上に見て...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
...或はゴエロの田舍の疎らな小家へ歸るかして...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...池の近くには流石に痩せた熊笹などが疎らに生えていた...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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