...人々は天使の貞操の面影を留めると云はれる原色写真版のエハガキを買ふ...
李箱 「興行物天使」
...それでも留めるのを漸くに暇乞して出た...
石川啄木 「鳥影」
...お蔦の留めるのも聞かないで...
泉鏡花 「婦系図」
...どうしてもそれまで起きていられないので燈火の消える時刻を突留める事が出来なかった...
内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
...引留めるように言った...
近松秋江 「別れたる妻に送る手紙」
...これを即座に捕え仕留めるのはやはり一種の早わざである...
寺田寅彦 「空想日録」
...ペンを取ってそれらの詩的な幻像を書き留めることができるのだった...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...「御免下さいまし、ほんとうに済みません」「いや、いいですよ、ごゆっくりお休みなさいまし」「存じませんものですから……」女は飛び起きて、なりふりを直しにかかると、兵馬は、「みんな、大へん心配したそうですよ」「ああ、わたしとしたことが……つい酔ったものですから、あなた様にも、どんな失礼をしたかわかりません」「不意にここへ君が来たものだから、多分、部屋違いだろうと思って、帰るように忠告したのだが、君がきかない」「ああ、悪うございました」「君がきかないでいるうちに、ここへ、この畳の上へ寝込んでしまうから、見兼ねて、拙者が起しに来ると、早くも拙者の寝床を奪って、君が寝てしまった」「済みません、済みません」「その時、無理にでも起せば起すのだったが、それほど眠いものをと気の毒に存じ、そのままにして、君をそこへ寝かしておいて、拙者はここへゴロ寝をしてしまったよ」「ま、何という失礼なことでしょう、これというのもお酒のせいです、もう、わたし、これからお酒をやめます、一滴もいただきませんから、どうぞ御勘弁下さいまし」「酒は、やめた方がいいな……」「のちほど、またお礼に出ますから……」と、なりふりを直した女は、蒼(あお)くなって恐れ入ったり、恥入ったり、ほとんど前後も忘れて、駈け出そうとするから、「まあ、お待ちなさい」兵馬は脚絆(きゃはん)を結びながら、呼び留める...
中里介山 「大菩薩峠」
...出直して突留める分には...
中里介山 「大菩薩峠」
...その旅情を留めるというのは...
中里介山 「大菩薩峠」
...看護婦長は氣象の勝れた女であつたから病院内の折合ひが面白からぬことがあつたので病院長が留めるのも聽かずに出てしまつたのであるが僕に一遍はどうか來てくれと再應の手紙であつたから行つたのである...
長塚節 「開業醫」
...他(ほか)のものゝ留めるにも拘らず...
夏目漱石 「それから」
...小梅の定吉が目顔で留めるから...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...平次と八五郎が留める間もなく...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...二人の女は泣いて留める...
森鴎外 「渋江抽斎」
...弟は目でわたくしのそばへ寄るのを留めるようにして口をききました...
森鴎外 「高瀬舟」
...彼はその労働者に三〇〇磅(ポンド)を支払いそして利潤としては単に四二〇磅(ポンド)をその手に留めるを余儀なくされるであろう...
デイヴィド・リカアドウ David Ricardo 吉田秀夫訳 「経済学及び課税の諸原理」
...あの豪奢な金銀の飾りに充ちていた神殿や宮殿はただ残骸を留めるのみであった...
和辻哲郎 「鎖国」
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